「部屋の露天風呂に一緒に入るのと、シャワー一緒に浴びるのと、どっちがいい?」
…なんだと!?
確かにさっきは私から誘ったけど、スイッチ入りすぎてない?
スイートルームに戻った私達。
開口一番なっちゃんが楽しそうな声でそう言った。
すんごい二択がきたなぁーなんて思いながらも視線は露天風呂へと向いていて。
でも海風でかなり身体はベタついている。
綺麗さっぱり洗い流したいのが本音。
真剣に考えている私を見てなっちゃんがトドメの一言をぶっこいた。
「ゆき乃はこの前俺の裸全部見たでしょ?…俺にも見せてよ。」
一瞬なんの事?って思ったものの…――「起きてたの!?」熱を出したなっちゃんを着替えさせた時、特に抵抗もなかったから寝ちゃってるんだと思っていた。
2回目の着替えはすこぶる恥ずかしがったし。
無言で口端を緩めて頷く余裕な顔のなっちゃんになんだろうか、ちょっと憎たらしさを覚えたなんて。
悔しいな、なんか。
ここに来てからずっとなっちゃんのペースで事が運んでいる。
私の方が歳上よ!
やっぱりなんか、悔しい。
だから―――――「じゃあ、どっちも!」きっぱり言い張るとさすがのなっちゃんもブッて笑う。
でも腕で顔を隠して「いいの?」そう言うから、なんだなっちゃんもやっぱり照れてんじゃんって嬉しくなったんだ。
だけどその後、真剣な顔で見つめる先は私のバッグ。
それからもう一度こちらを見つめて「ほんとにいいの?」二度目の確認が届いた。
あえて見ないようにしていた携帯。
誕生日の今日、もしかしたら会社でネコが樹に伝えているかもしれない。
電話がかかってきているかもしれない。
それに出ないなんて選択肢、ここに来るまでは無かったのに…
目の前のなっちゃんとの時間を優先させている自分がいて。
二択の選択すら選べない。
電話に出なければ私はもう樹の所には戻れない…
―――うううん、あの時キスを受け入れた時点で樹の所には戻れないんだって。
心のどこかでそれを分かっていたのに、なっちゃん欲しさに瞳を閉じて受け入れた。
それが全ての答えなんだと。
スッと手を伸ばしてなっちゃんの首に巻き付ける。
すかさず腰に回されるなっちゃんの力強い腕に幸せすら感じている。
「いい。」
なっちゃんの大きな身体にすっぽり埋まってその厚い胸筋に顔を伏せる。
でも、「顔見せてよ、ゆき乃。」すぐになっちゃんの手が顔を上に向けて…
自分が真っ赤になってるのが分かる。
でも同じぐらいなっちゃんも真っ赤で…
思わず二人、顔を見合わせて吹き出した。
「もう戻れない。」
私の言葉になっちゃんの気持ちを乗せたキスが落ちた。
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