「見栄えは美人!一言で言うと美人で、でも笑うと幼くて可愛いんです。とにかくめちゃくちゃ可愛いんです。俺より歳上なんだけど、ちゃんと甘えてくるし、マジで可愛いんです。」
店員に婚約者様はどんなイメージですか?と聞かれ、力説していた俺を横目に笑う健太さん。
「仕事ができるけど、たまに抜けてるとこもあって、そこも可愛くて。ね、可愛いでしょ?」
ちっとも引くことなく笑顔の店員に「こちらはいかがですか?」勧められたエンゲージリングを見つめる。
それを手にした時のゆき乃の笑顔も。
「ちゃんと、喜んでくれるよな。」
ポツリと呟いた独り言に健太さんは「喜ぶよ!」笑顔で背中を叩いた。
とりあえず予約してみた。
文字を入れるか聞かれて、それはちょっと考えたいからって一週間後にまた来ます!と伝えてお店を後にした。
婚約指輪を予約しただけなのに、心が晴れ晴れしたのは、これを受け取ったゆき乃を想像できたから。
単純というか、現金なヤツというか。
あんなに不安だった気持ちがスーっと落ち着いていく。
「健太さん、御礼に夕飯奢りますよ!」
◆
「もしかして、初恋ですか?」
昼間、ネコさんの事で散々悩んでいた健太さん。
確かに俺が吹っ掛けたんだけど、この人の悩む姿はわりと面白い。
居酒屋の個室でおしぼりで手を拭きながらそう聞くと苦笑いを返す健太さん。
どうやらこの人は本気の恋をして来なかったようで、この歳にしてその現実にぶち当たって動揺している様子。
「恥ずかしながら…。色々考えてるんだけどネコちゃんだけを手に入れる方法を。でも今更俺がいっても黎弥も迷惑だろうしさ。」
なんだ、案外この人も臆病なんだ。
本気じゃなきゃあれだけはめを外せるのに、告白如きで悩む健太さんは貴重だ。
枝豆をパクつく俺は健太さんのスマホを指さす。
「ちょっと見せて貰えます?」
「え?いいけど、なに?」
LINEの友達画面を前にして健太さんに戻した。
キョトンとした顔の健太さんにニッコリ微笑んで続けたんだ。
「ここにいる女をネコさんだけにすればいんですよ!」
簡単なことだ。
身内と仕事関係者と惚れた女以外の話し相手なんて必要ない。
同性でまかなえる。
俺の言葉に健太さんは半分以上残っている生ビールをごくごくと一気に胃に流し入れる。
「そしたらネコちゃんまた俺に笑顔くれるかな?」
不安気な健太さんに親指を立てて「勿論っす!」俺の言葉に上機嫌に変わった。
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