漆拾漆 秘密の約束


【side ネコ】


ゆき乃先輩の誕生日の翌日、ポツンと入っていたLINE。

電話しても出ないしLINEも既読にならないしで絶対の確信があった。

だからその言葉を見てあたしはもしかしたら?と思っていたことが現実になっているって思ったんだ。


【ネコ。帰ったら会いに行くね。】


メッセージのやり取りのできるLINE如きで話せる内容じゃないってことだと。

その一言で何があったのか容易に想像がつく。

藤原樹、ざまーみろ!

なんて軽く思ったけど、藤原くんの気持ちになるとそれはもうやり切れない気もした。

あたしを無意識で抱きしめる黎弥の腕枕は何よりも安心ができる。

どんな事をしてもあたしから逃げないで離れなかった黎弥。

愛を感じる。

ゆき乃先輩となっちゃんが傍にいない今、あたしを見捨てないでいてくれるのは黎弥だけだ。


だけど…――――ポロンと鳴ったLINEのメッセージ。

もう来ることはないと思っていたかみけんくんから。

後ろで寝息をたてている黎弥に気づかないようにあたしはそれを開いた。


【ネコちゃんだけのけんたになるまで少しだけ待ってて。そしたらまたネコちゃんに逢いに行くから。】


…こんなにも心が高揚するのはかみけんくんだけで。

どんなに黎弥が優しかろーが、愛してくれよーが、かみけんくんへの気持ちには敵わないんじゃないだろうか。

きっと誰もが黎弥を選んだ方がいいって言うに違いない。

だけど恋は、うううん、あたしの愛はそんなもんじゃない。


【待ってていいの?】


震える手でそう打ち込んで、やっとの思いで送信すると、すぐに既読がついた。


【約束する。必ず迎えに行く!】


ぎゅうっとスマホを胸に抱きしめる。

そこにかみけんくんの想いものせて。

あたしも言おう、ゆき乃先輩となっちゃんに。

誰がどう言おうが、かみけんくんがやっばり好きだと。


「ネコ〜愛してるよぉ、」


不意に聞こえた黎弥の声にビクッと身体を震わせる。

もしかして、見られてた!?

ドキドキしながらも「黎弥?」聞くと、スースーって寝息が耳に届く。

な、なんだぁ寝言か、吃驚したなぁ。

でも黎弥にこそ、ちゃんと言って今度こそこの関係を終わりにしないと!って、意気込んだあたしを、心無しか黎弥の抱きしめる腕に力が込められた気がしたなんて――――


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