【side 夏喜】
まるまる一週間ゆき乃を独り占めした俺は、ゆき乃を抱いた事でゆき乃が手に入ったと思い込んでいた。
実際は何の解決もしてないのに。
新幹線で東京駅に着くとうだるような暑さだった。
梅雨がまだあけていないジメッとした雨模様の東京。
手を繋いだままの俺とゆき乃。
不安気に新幹線から降りてエスカレーターで駅に入る。
だけど不意にその手が離れて、あっという間にゆき乃の姿が消える。
視線の先、ゆき乃を抱き寄せる樹に目の前が真っ暗になった。
時間なんて伝えてなかったのに、もしかして朝から待ってたのかよ?
「樹、樹、」
「…逢いたくて死にそうだった。」
そんな言葉と共に外野も気にしねぇ!ってゆき乃にキスを落とす樹にイラっとして一歩そっちに踏み出そうとしたらキスを止めて俺を睨みつけた。
「帰ろ、ゆき乃。」
ゆき乃の視界に俺を入れようとしない樹は、ゆき乃の肩を抱いてそのまま誘導する。
「車で来てるから。」
強引にゆき乃を連れていこうとするからその手を退かすように俺は樹を引き止めた。
「おい、樹!」
肩に乗せた手をすごい勢いで振り払われて、冷たい目で俺を見る樹にゴクリと唾を飲み込んだ。
まぁ、分かってるよな、俺達がどんなだったか。
その鋭い刺すような目付きの樹なんて今まで見たことがない。
本気で怒ってやがる。
「話を聞いて欲しい。頼む、」
頭を下げる俺に「悪いけど、夏喜から聞きたい話なんてないから。」分かりきった樹の冷たい声と態度にゆき乃に視線をうつすと、唇を噛み締めて複雑な顔で…
そんな顔させたかった訳じゃないのに…
後悔なんて一つもないし、ゆき乃への気持ちは変わらない。
でも、ゆき乃のそんな顔は見たくなかった。
「樹、ごめんね樹…。嘘は付けない、私なっちゃんの事が、」
「結婚しよう、ゆき乃―――――。もう指輪予約してきた。喜んでくれるといいな。」
ゆき乃の言葉を遮った樹が被せるように言い放ったんだ。
ニッコリ微笑む樹に背筋がゾクリとしたなんて。
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