そこからの記憶はあやふやだった。
ただ一つ覚えている事と言えば、久々に彼の夢を見たって事。
学生の頃大好きでそばにいたくて、夢中で追いかけたあの彼との夢。
「ゆき乃もその身体も誰にも知られたくねェ」
「ずっと俺の事だけ見てろォ」
毎夜そう言って彼に抱かれていたあの頃。酒を飲んで理性崩壊した私は彼に抱かれる事だけが、幸せだったなんて。
◆
ヤバい、頭痛い。
外の音が遮断されたここは俗に言うラブホって奴。学生の頃よく入っていたから分かる、このピンク色の忌々しい明かり。
キングサイズの備え付けベッドに埋め込まれている時計に目をやると結構な時間だった。
今すぐにシャワーを浴びたいところだけれど、既にシャワーを浴びる音が聞こえているから無理だと諦める。
仕方なく私はスマホを取り出して朝一でも着信に気づくだろう大樹に助けを求めた。
当たり前のよう車で私を迎えに来た大樹に家まで送って貰ってシャワーを浴びて服を着替えてまた大樹の車に戻る。
後部座席で軽く化粧をしたけど、揺れるからアイラインが引けない。おまけに久々に酒を飲んだせいで顔がパンパンにむくれていて酷い。
鞄の中から使い捨てマスクの袋を取り出すとそれをすぐ様耳にかけた。
「あの、姐さん。」
そこまですると待っていたかの様、運転席の大樹が遠慮がちに声をかけたんだ。
「なに?」
「もし間違っていなかったら…なんですけど?…昨日酒飲みました!?」
無言の私をミラー越しに不安気に見つめる大樹の目はちょっとだけ人より離れがちで、それが可愛い!なんて言う女たちも多かった。
「飲んだわよ。…もしかして、臭う?」
「はい。めちゃくちゃプンプン…。」
やっぱりな苦笑いをしている大樹に「お腹空いた。スタバ寄って。」そう言うと「承知しました!」なんて営業返事をしたからそのまま私はスタバに着くまで寝たフリを決め込んだんだ。
そうして無事に会社に送り届けて貰った私は自分のデスクにヘナヘナと顔を乗せてしばし目を閉じた。
ひんやりとしたデスクの冷たさに熱していた身体の熱が奪われていくようでちょっとだけ心地が良い。
ネコとなっちゃんがいるであろうCafeに行く時間がなくて、仕方なくパソコンの電源を入れて仕事に取り掛かるんだった。
.