玖 一夜の相手


お昼休みまで死ぬほど長く感じた。

それなのに直前で変な電話を受けちゃったせいで食堂に行くのが少し遅れた。

今朝はスタバのミルクティーしか飲んでないけど、そんなにお腹は空いてなくて。

自分がどれだけ飲んだのか分からないけど胃を休めた方がいいだろうしって、いつものボロネーゼではなくサラダうどんをお盆に置いてネコとなっちゃんのいるいつもの場所に行った。

お弁当を広げているネコと、いつもの唐揚げ定食のなっちゃん。


「ゆき乃さん、大丈夫?」


なっちゃんの言う大丈夫?が、どれに当てはまるのかさっぱり分からないけど「うん。」とりあえずはそう答える。


「相当飲んでたよ、ゆき乃先輩!てか、かみけんくんの手握ったでしょ!」


ネコがジィーって恨めしそうに睨んでくるけど、正直あんまり覚えていない。だから逃げるように「あ、お茶買ってくるね。」そう言って立ち上がると、ちょうどこちらに向かってそのネコの秘密のダーリンかみけんが歩いて来た。

いつもは上にセットされている髪がサラッと降りているせいか、ネコがキラキラした目でそっちを見ているのが分かる。

この顔を黎弥が見たら…なんて思うと少しばかし黎弥を哀れに思えた。そして今ここに黎弥の姿がなくてよかった!とも思えてしまう。

だけどそのすぐ横、私を見て駆け寄ってきた男。


「ゆき乃、よかった。今朝シャワー浴びてる間に居なくなってたから心配した。まだ顔色悪いけど大丈夫?」


…こいつか、今朝まで一緒にいたのは。ほんっとに申し訳ないけど、全然思い出せそうもなく。


「あ、えっと…。藤原くんだっけ?もしかして昨日ホテルに一緒に居たの?」


そんな私の言葉にネコが「うわ、これって酔った勢いでヤッちゃったパターン?」なんて顔で苦笑いを零している。

でも反対側にいたなっちゃんが小さく舌打ちしたのを聞き逃さなかったんだ。
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