【side 黎弥】
ゆき乃さんが泣いてるって分かったのは目が真っ赤だったから。
ネコから夏喜とゆき乃さんの事は聞いていたからなんとなく状況は分かる。
「ご心配おかけしました。」
風邪引くからってシャワーを浴びさせたゆき乃さんが夏喜に手を引かれてリビングに戻って来た。
俺とネコを見てそう頭を下げるからなんか変な気分だった。
温かい紅茶を飲むゆき乃さんは初めて見るってくらい大人しい。
いつも夏喜やネコにあれやこれや言っている人だったからこんなゆき乃さんは何か別人みてぇ。
「俺が話つける。ゆき乃にこんな顔させるなんて、」
「でもなっちゃん。取ったのはなっちゃんの方でしょ?ゆき乃先輩を大事に思うなら藤原くんを責めちゃダメな気がする。」
要するに、樹と付き合ってたゆき乃さんを、後からきた夏喜が奪い去ったってことか。
いやちょっと待てよ。
「夏喜ごめん。…俺は樹の気持ちがよく分かるかも。」
口を挟んだ俺にみんなの視線が集まった。
ハッとした顔をするネコに若干苦笑いを零す。
「い、今はあたし達の話じゃないでしょ、黎弥!」
慌てるネコだけど、夏喜とゆき乃さんは黙って俺の言葉を待っているようだ。
二人とも微動打にせず俺を真っ直ぐに見ている。
「まぁそうだけど。けどさ、樹は俺みたいな性格じゃねーだろうし、1人で抱え込んじゃって周りが見えなくなっちゃったのかもしんねぇーけど。どうにか繋ぎ止めておきたいって気持ちに嘘はないんじゃないの?」
プロポーズをしたらしい樹。
指輪を予約したからって。
そこまで切羽詰まった樹をちょっと不憫にすら思えた。
俺は結婚まで考えてなかったけど、気持ちがない訳じゃない。
「うん。黎弥の言う通りね。」
1人納得するゆき乃さんを夏喜が抱き寄せた。
「堪んねぇよ、取られた方は。…けどさ、それでも好きだって気持ちは…愛してるって気持ちは止められない。どうにか戻って欲しい、許すから…って。」
そう、許すから戻って欲しいんだ、俺はネコに。
視線をネコに向けるとなんとも複雑な表情でカフェラテを飲んだ。
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