【side 夏喜】
ゆき乃がシャワーを浴びてる間に樹にLINEをした。
たかが女一人で俺達の友情は崩れてしまうものだろうか?
だけれど、俺も樹も本気でどっちも引けない。
確かに悪いのは俺。
ゆき乃への気持ちをあえて閉じ込めておいたものの、それが誰かの物になった途端に黙っていられなくなった。
恋愛気質なゆき乃は常に誰かに恋をしていた。
でもそれはわりと一方通行で、だから勝手に安心していたんだ。
でもゆき乃の恋が、樹によって愛に変わった瞬間、激しい独占欲が生まれて…
「ネコ、黎弥くん。ゆき乃を頼む。ゆき乃が寝たら俺、樹んとこ行ってくる。後さ、合鍵貸して。」
2人にそう言って俺は樹に伝える言葉を考えていた。
「これ以上藤原くんと一緒にいてもゆき乃先輩もう笑えないよね。なんかやだ、そんなの。」
きっと、自分たちの関係と重ねているんだろう黎弥くんは顔に出していないつもりかもしれないけど、相当真顔で考えちゃってるのが見え見えだ。
この人も、ネコを本気で愛しているからこそ、健太さんには渡したくないんだろうな。
ボロボロになったネコを見るなんて俺だって嫌だ。
でも俺は健太さんじゃないし、ゆき乃もネコとは違う。
「黎弥くん。一緒に考えないで。俺達と黎弥くん達とは違うでしょ。ネコ、お前もいい機会だから真剣に考えろよ。自分の未来を。…勿体ねぇぞ、可愛いんだから。」
ふわりとネコの髪を撫でると膝を抱えて顔を埋める。
ネコが何かを言おうとしている事は分かる。
でも何を言うこともなく小さくコクっと頷いた。
チラリと時計を見るとゆき乃が風呂に入ってから20分程過ぎていた。
「俺様子見てくる。」
立ち上がって洗面所のドアをガチャっと開ける。
「ゆき乃?大丈夫?」
中のドアに背を向けて座るとそう聞いた。
「なっちゃん?うん、もうあがる。」
「俺ここにいてもいい?」
「ん。いいよ。」
そんな声のすぐ後、ガチャとゆき乃がドアを開けた。
バスタオルを持ってそのままゆき乃を抱きしめる。
「ごめんね、ゆき乃。でもごめん、好きだよ。好きなんて言葉じゃ足りない。」
火照った肩に顔を埋める俺の後頭部にふわりとゆき乃の手が触れて。
「もっと言って、」
「大好き。」
絶対普段はこんな事言わない。
でもゆき乃を前にすると感情を表す愛の言葉が次から次へと出てくる。
それでもゆき乃は俺に好きと言わない。
樹の前で初めて聞いたゆき乃の告白を思い出すと胸が熱くなる。
早く聞きたい、その口からその声で――――
樹、ごめん。
ゆき乃が欲しいんだ、俺。
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