【side ネコ】
かみけんくんからLINEがきてから1週間がたった。
相変わらずあたしは黎弥のあの部屋で暮らしている。
居心地がいいといったらそれは間違いじゃない。
だってあの部屋は黎弥があたしが居やすい空間を作ってくれているから。
今日は黎弥が友達と夕飯を食べるって言ってたからゆき乃先輩となっちゃんを誘おうと思ったけれどあの二人はまだ仕事が終わらないって言ってて。
名古屋から帰ってきて対策室ができたからそこで毎日遅くまで残業している。
藤原くんとどうなったのかも気になるけど、今は仕事が忙しくてそれどころじゃないのかもしれない。
あたしも仕事が忙しかったら少しは気が紛れるのかな?
小さく溜息をついてウインドーショッピングをしながらふと立ち止まった。
夏に向けて新しいピアスでも調達しようとお店に入ろうとしたあたしの目に、既にお店の中に入っていたその姿。
うそ、かみけんくん!!!
店員のお姉さんと楽しそうに話している姿を見て胸の奥がキュンとした。
かみけんくんも、新しいアクセサリー調達しようとしてるの?
息を吸って一歩踏み出した瞬間、「けんたぁ!」知らない女がかみけんくんを呼んだ。
元カノでもない、派手な女に足が竦む。
運良くかみけんくんはこちらに気づいてはいない。
今なら見なかった事にできる。
今なら何も聞かなかった事にできる。
「ネコちゃん?」
でも動けなくて。
かみけんくんが後から来た女を抱き寄せた時に視線がこちらに飛んできて、そう名前を呼ばれた。
「…うん。」
辛うじて出した声。でもかみけんくんは女を抱きしめたまま「ネコちゃんも買い物?」普通に話しかけてくる。
ねぇその女、誰?
なんで抱きしめてんの?
言いたい事は喉の奥から出てきているのにそれを言葉にできない。
「もーけんたぁ、浮気はダメって言ったでしょ?」
耳障りな甘ったれた女の声に吐き気すらする。
腰まであるロングな巻き髪がふわりと揺れてかみけんくんの視界が女の手で離れていった。
キス、してんの?あの二人。
冗談でしょ。
あたしはハッとして固まりそうだった身体を動かした。
「かみけんくん!!あの約束、嘘じゃないよね?あたし待ってていいんだよね?忘れてないよね?」
捲し立てるように女から引き離すと「けんたに触るなよオバサン!」持っていたハンドバッグがあたしの肩に当たる。
でもそんなのどーでもよくて。
「え、約束?えーっと、なんだっけ?ごめん俺、ネコちゃんとなんか約束してた?」
聞き間違え…なんかじゃなくて。
なんだそっか、そーいうことか。
「うううん、何もしてない。あたしの勘違い。」
こんな結末あるのだろうか?
だから言ったじゃない!ってゆき乃先輩が呆れた顔でそれでも慰めてくれるよね?
馬鹿だなぁ、お前は!ってなっちゃんが覚めた顔でそれでも頭撫でてくれるよね?
安心しろ、俺がずっと傍にいるから!って黎弥が優しい顔でそれでも抱きしめてくれるよね?
ねぇあたし、どうすればいいの?
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