黎弥の姿を見た瞬間目の前がぼやけた。
あたしを見て吃驚した黎弥はそれでもすぐに階段を降りてきてフラついてるあたしを抱きとめてくれる。
その匂いと温もりに喉の奥が熱くなって涙がボロボロと零れ落ちた。
「どうしたんだよこんなとこで。ネコ一人なのか?」
当たり前に追いかけてくるわけもない藤原くんに気づくこともなく黎弥を見つめると「ごめん、俺が一人にしたからだよな。マジごめん。竜太、悪い埋め合わせするから、今日はごめん。」
異様な空気だったせいか、黎弥の連れも「おう。奢れよな!」あっさりと引き下がってくれて、そのままバーの下へと降りて行く。
「黎弥、いいよあたし、一人で大丈夫。早く追いかけて、」
「ネコが大丈夫でも俺がダメなんだよ。言ってんだろ、一人で抱え込むなって。俺をもっと頼れって。」
ふわりと黎弥の手が優しく頭を撫でるから余計に涙腺が崩壊して涙が零れる。
今だけは黎弥に会いたくなかったのに。
弱くて黎弥に甘えちゃうあたしが出てきちゃうから。
「惚れた女に頼られて嬉しくない奴なんていないぞ。…もうやめろって、健太のために泣くの。」
指で目の下を拭いながら小さく言う黎弥の優しい瞳にまた一つ涙が零れた。
かみけんくんのこと、何も言ってないのに、あたしが泣くのはいつだってかみけんくんが絡んでいるって分かりきっている黎弥。
「…フラれちゃったよあたし。もう手の届かないとこにいっちゃったの、かみけんくん。助けて黎弥、胸が苦しくて息ができない…」
過呼吸になりそうな荒ぐ呼吸のあたしをそれでも黎弥は慌てもせず抱きしめてくれた。
何度も心の中で黎弥の事裏切ってた。
こんな風に優しくして貰う資格も、守ってもらう資格もない。
「黎弥の傍にいられないよ、」
「バカ言うな。そんな小せぇ男じゃねぇよ俺は。ネコの気持ちが大事だからずっと我慢してた、けどごめん…―――もう限界、ネコに触れたくて仕方ねぇ…」
そう言った黎弥はあたしを壁側に追い込んでトスッと背中をつける。
「心配いらねぇ、俺が助けてあげる。」
ニコリと微笑むと黎弥の手があたしを固定する。
目を閉じる寸前「好きだよ、ネコ。」甘ったるい黎弥の声と久しぶりのキスに目眩がしそう。
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