玖拾参 凄く寂しい


―――半年後。


「ゆき乃先輩こっち、こっち!」


今日はネコの恋人、黎弥の昇進祝いだった。

ネコに愛想つかされないように!って、物凄い仕事を頑張りつつ、それでもネコ第一優先で日々を生きている黎弥は、見事に瀬口係長へと昇進を果たした。

そのお祝いで、内輪で飲み会をする事になっていて。

なっちゃんが来たら帰ろうと思っている。

社内でもほとんど顔を合わすことがなかったものの、時々見かけることはあって、その度に胸の奥がきゅうって痛かった。

名古屋に続き九州にも支店を作ろうという計画があり、福岡出身の樹に白羽の矢がたった。

それを快く受けたのは私の事もあったからだって思う。

だから樹とも、会うのはあの日以来な訳で。

私はこの半年で女を捨てないように頑張った。

プリンだった髪色も定期的に美容室へ行ってケアし、とれかけていたネイルもちゃんと付け直して。

会社帰りにコスメストアで色々物色して試して…と。

せめて次になっちゃんと会う時は、可愛いだの、綺麗だの、言われなくとも思って貰えるようにって。

かみけんは運命の相手に出会ったはずなのに、結局メンヘラに戻っていて。今もかみけんを想って寂しい思いをしている女がいるとか。

そしてネコは、ちゃんと黎弥と恋人している。

寂しがり屋なネコはすぐに黎弥と同棲を初めて、毎日ラブラブな生活を送っている。

この二人はもう大丈夫だって、素直に思える。


「黎弥!おめでとう!!少し見ないうちに男度が増したんじゃない?」

「ゆき乃さん、アザース!えーマジで?めちゃくちゃ嬉しいです、それ。まぁ毎日ネコに愛されてるんで!」


ガシッとネコの肩を抱いて笑う黎弥の笑顔は眩しい。

ネコは嫌がりもせず「ネコが黎弥に愛されてんだよぉ。」なんて甘える姿が単純に可愛い。



「ふふ、よかったね、ネコ。黎弥も。」



大好きな人が幸せだと自然と自分も笑顔になれるなんて。



「次はゆき乃先輩の番だよ。」


ネコに言われて微笑む。

私もさすがに寂しい。

半年間、一度もなっちゃんと言葉を交わすことがなかった。

今まで当たり前だった事が一つでも無くなってしまうと、それはそれで凄く寂しい。

なっちゃんを想うと涙が溢れそうになってしまう。

だから今日までなるべく考えないようにしてきた。


「ゆき乃…」


トクンと胸を打つその声に心がザワつく。
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