「寒くない?」
みんなと別れて澤本くんと二人きり。静かな夜道をゆっくりと私の歩幅に合わせて歩いてくれる。
「優しいね、澤本くん。」
「うーん。気になってる子にだけですよ、俺。黎弥や翔太みたいにみんなに優しい男ではないんです、これでも。」
…それは前向きに捉えていいものなんだろうか?恋をした…って記憶を辿るなら、20歳前の人が最後で。それ以来まともに恋愛って恋愛をしてこなかった私は、この澤本くんの言葉を間に受けていいのか、さらりと流すものなのかの判断すら出来なくて。
「…そうなんだ、それも意外。」
当たり障りのない言葉を返すことしか出来やしない。
ゆき乃さんなら「私には優しいの?」ぐらい聞いてるに違いない。少なくともそう言う可愛らしい勇気すら、次の一歩に繋がっていくんじゃないかって思う。
思うけれど、実行するには可愛いらしい程度の勇気じゃ足りなくて。澤本くんの事をもっと知りたいって小さなトキメキを胸の奥にしまうことなんて容易に出来てしまう自分がちょっと不憫に思えた。
「うーんそうか、そうくるか。ユヅキさんって鈍感って言われませんか?」
「えっ?どういう意味?」
チラリと澤本くんを見ると当たり前に目が合った。見られてた?恥ずかしい。顔を伏せた私の手を不意にキュっと握られて。
「酔ったから捕まえといてください。俺の事。」
…酔ったから?なにそれ!?意味不明!
「からかわないで、澤本くん!」
「分かりました、じゃあ今のは口実。本当はずっと触れてみたかった、その白い肌に。」
…―――――ダメだ、勝てない。
「ずるいよ、澤本くん。そんな事言われたら私だって触れたくなる。」
握られた手にキュッと指を絡めると、「夏輝って呼んで、ユヅキ…。」甘い問いかけと共に舞い降りたキスに、こんな展開ないよね?って気持ちが一瞬でぶっ飛んだ。
初めて会った人なのに、なんでこんなにも惹かれてしまうんだろう?なんて愚問。きっと私達は今日出逢って恋に落ちる運命だったんだ…―――――――。