その日の夜から八木勇征とのLINEで、彼が借り物競走に出ることを知った。
【好きな人ってカード引いたらどーするの?】
今どきそんな子供じみたカードなんてあるわけないって思うけど、一応聞いてみた。だけどそれは残念な事に既読スルーされ、微妙な空気感のまま体育祭当日を迎えたんだ。
「ユヅキさん、八木勇征走るよ!」
同じクラスの莉子がポンって肩を叩く。その隣、香澄も「ねー好きな人カード入ってたらどーする?」なんて余裕の表情。
「そんなのないでしょ。それに、」
「え、知らないの?毎年たった1枚だけ好きな人カードが入ってるって噂。」
噂好きな香澄がそんな事を言った。
「…でも八木勇征は私の事好きなわけじゃないし、」
昨日の今日で正直落ち込んでる。体育祭で浮かれてる気分じゃない、とてもじゃないけど。
「ねぇでもこっちに向かって走ってくるよ、八木勇征。」
莉子の声に顔を上げると八木勇征と目が合った。私の目の前まで来ると、手にしていたカードをクルリと見せた。
「俺も、ユヅキちゃんだけだから、ダンパでたいの!昨日めちゃくちゃ真剣に考えたけど、こんな俺を1番に選んでくれたユヅキちゃんが、俺の好きな人!だから一緒に来てください!」
お見合いテレビの告白劇みたいに八木勇征が手を差し出して頭を下げると、莉子やら香澄やらの悲鳴のような歓声があがる。
急いで八木勇征の手を掴むとそのままゴールに向かって一直線で走り抜ける。順位は見事に1位!
「おめでとうございます!カードはどんなお題ですか?」
実行委員に突っ込まれて八木勇征が「好きな人です!」…堂々と答える姿は想像を遥かに超える男らしさで、倒れそうなぐらいかっこいい。
途端に歓声があがって、一気に全校生徒の注目の的。恥ずかしくて死にそうだけど、八木勇征がギュっと強く手を握ってくれてる事が嬉しくて。
「と、言ってますが、どうですか?」
マイクを顔の前に出されて、八木勇征の腕に軽く隠れながら「あってます。」なんて答えた。その瞬間、放送部なのか、ボディーガードの主題歌が、エンダァーーーイヤァー大音量で流れる。