「そういえば、恋愛禁止解除になりましたね。」
つい最近まで、サッカー部は諸々の事情で代々恋愛禁止を貫いてきた。だけどそれがわたし達の代で終わらせようってことになって、彰吾がそれをみんなに発表してくれたんだ。
だから北人なんて思いっきり遊びほうけてるし…いや元から遊んでたか、北人は。
みんな急に恋愛開始しちゃってて…ちょっとおいてきぼりを食らっているのは事実だった。
「ね。黎弥なんてモテちゃっててなんか腹立つ…。」
「…それって気にしてるから、ですか?」
「え?」
どういう意味?って勇征に視線を向けると、真っ直ぐにわたしを見ていて。
そんな顔、するんだって胸が熱くなった。
「黎弥先輩と、仲良いですよね、ユヅキ先輩。」
「…同じクラスだし、部活も一緒だから、だけど?」
「ほんとにそれだけ、ですか?」
「…勇征?」
トクトク音を鳴らす心音が勇征の瞬き一つでバックンバックン鳴り響く。
「もう一泳ぎしてきます!」
沈黙に耐え切れず、勇征がプールに飛び込む。
水部でもないのに綺麗なフォームで50メートルをクロールで進む勇征の水しぶきを浴びて、着ていたTシャツが思いっきり濡れた。
…気になってるのはどちらかというと、黎弥よりも勇征の方で。
恋愛禁止が解けた今、わたし達を止めるものも縛るものも何一つない。
たぶん今ってチャンス到来って奴、だよね?
昔から正直水が苦手なわたしだけど、ドボンっとプールの中に入った。
思いの外深いそこに慌てて手すりに掴まった。だけど、次の瞬間ふわりと後ろから支えられて…――−「勇征?」…「捕まえた!」耳元で聞こえた声にドキンと思いっきり心臓が高鳴った。