ポコンとITSUKIからLINEが届く。そこにはホテル名と部屋番号が書いてあって。
「…お、きた?」
後から私の画面を覗き込む健太は、私の耳をパクリと舐める。
「…もしも私が断ったら?」
「断れねぇよ、お前は。俺のためだもん。」
どうしたらいいのかわかんなくて。それでも私をITSUKIの元に押し出す健太を嫌いになんてなれなくて。自分じゃ答えなんて出せなくて、でも足はホテルの方に向かっていた。
こんなの許されないって思う。健太の為にもならないし、こんな風に勝ち取る勝利に価値なんて1ミリもなーーーーー「…黎、弥?」ホテルのラウンジを通り抜けたそこ、エレベーターホールの前の壁に背をつけているのは確かに黎弥で。カツンとヒールを鳴らした私に視線を向けた。
「行かなくていい。」
「…え?」
「全部聞こえてた。…そんな事する必要ないよ、雪乃。」
なん、で?なんで、こんなとこにいるの?
「黎弥、どうしてここに?」
「どうしてって、雪乃の顔に書いてある、助けてって。俺が雪乃のSOSを見逃すわけないっしょ!」
ニカッて笑ったその顔は私がずっと大好きだったあの頃の黎弥のままで、ここにきて初めてこの状況が怖くて身体が震えだした。
フラッと体制を崩す私をその片手で軽々と抱きとめられて。…こんなに逞しかったっけ?黎弥って。
「…5年ぶりだな、雪乃。…見違えるぐらい綺麗になったな。」
ポンと黎弥の手が私の頭に乗っかる。温かくて大きなこの手は、いつだって私を守ってくれた。どんな事からも助けてくれた。
「黎、弥…、どうしたらいいか分かんなくて…、もう私、どうしたら…、」
「心配すんな。俺は汚い大人になんてなってねぇから。やるなら正々堂々勝負するのみだ。」
右も左もない、真っ直ぐ前だけを見つめている、そんな黎弥が大好きだった。大好きすぎて壊れちゃったあの気持ちが胸の奥でポッと火をつけたのは、気のせいだろうか?