毎週金曜日の夜はそこって決めていた。最近通い始めてやっとマスターに顔を覚えて貰えて話しかけて貰えるようになった。
カウンター式のこじんまりとした小さな居酒屋。決めてはご飯の美味しさ。一週間の愚痴を全部聞いてくれるマスターと話す事がココ最近の私の唯一の楽しみだったんだ。
だけどその日、金曜日のその日、お店の透明ガラスドアに貼り紙された文字を見て絶望を覚えた。
「貸切だと?」
よく見る【本日貸切です。】の文字にメラメラと怒りが湧き上がってくる。この日を私がどれだけ楽しみしていたのか分かっていない。
一週間つもりに積もった愚痴を吐き出さないと月曜日晴れた心で出勤なんてできやしない。
「どーしてくれんだ、ちきしょう。」
深々と大きな溜息をついた私は仕方なくくるりと反転してコンビニへ向かう。自分で何かを作る気もさらさらない。
だけどその時だった、「雪乃ちゃん!」後ろから私を呼ぶ声がした。
振り返るとマスターが何かを抱えてこちらに小走りで近寄った。
「マスター?」
「ドア窓から雪乃ちゃんが見えて。ごめんね、今日貸切で。ちょっと急に決まっちゃって。もしよかったらこれ僕の連絡先。これからは金曜日何かある時連絡するよ?それとこれ、雪乃ちゃんの好きなひじき。タッパーに入れといた。よかったら食べて。」
…超絶泣きそう!!すぐさまそれを受け取るとまだ温かくて。
「いいの?マスター。」
「もちろん!雪乃ちゃんはうちの大事な常連さんだから。よかったら金曜日以外も待ってますので。」
そんな事言われたら毎日行きたくなっちゃうよ。涙ぐむ自分に若干の歳を感じるも素直に頷いて「ありがとう。」マスターに頭を下げた。
それから三日後、LINEフレンドに昇格したマスターから届いたメッセージにちょっとだけ心が踊ったんだ。