澤本くん 2


「それでね、私ってばやっぱり性格ブスなんだなぁーって自覚。」


美味しいお酒とお料理と、イケメンな新入りくんと、優しいマスター。お酒が入れば入る程饒舌になってきて、気分も良くなる。

自分の身の上を人に話すのはあんまり得意ではないはずなのに、ここでだけは何故か色んな事を口に出せてしまう。


「はは。」
「せっかく友達が送ってくれたLINEにケチつけちゃった。」


久々にきたLINEだったから本当は凄く嬉しかった。私の事考えてくれたんだって。それなのに…


「やっと私の事思い出した?なんて…。」


自己嫌悪でどうしようもない馬鹿さ加減に涙が出る。今日は面倒くさい自分が抑えられそうもない…。


「あの、マスター。ごめんなさい、今日は帰ります。お勘定お願いします。」


スッと立ち上がる私を見てキョトンとしたマスター。それでも優しく微笑んで「好きなだけ居てくれていいんですよ。僕らは苦に思う事もありませんので。モヤモヤしたまま一人で過ごすなら、まだここに居て全部吐き出して欲しい。」…弱っている時に優しい言葉をかける男はいけ好かない。

だってそれを分かっててやってるなんて、確信犯でしかない。だけど、そんな風に私を分かってくれる、受け止めてくれる人なんて、マスター以外いやしない。


「使ってください。」


差し出された男物のハンカチ。見ると澤本くんが優しく微笑んでいて。


「マスターも澤本くんも、私が好きになっても知らないから。」
「え、」


思いっきり目を見開く澤本くんに、プッて笑う。


「冗談です。でも女はそーいう意味の無い優しさに弱いから。…お借りします。」


手に取って目頭を抑える。飲食店で香水つけてる店員なんてご法度だけど、この柔軟剤の匂いは何でか落ち着いて、澤本くんって人の優しさを表しているように思えたなんて。