シラフのキス


言われるがままに目を閉じた。馬鹿だなって自分でも思う。だけど私に思いっきり身体を寄せて唇をハムる壱馬くんのキスを、私が我慢できなかった。ゆっくりと離れた唇は、すぐにまたお互いの唇を求めて重なり合う。こんなに情熱的なキスは、今までしたことがないかもしれない…。


「今日は、酔ってない…ですよね?」


しばらくして壱馬くんが少し掠れた声でそう聞いた。顔にかかった髪を優しく指で解いて私の頬を撫でる。この甘ったるい壱馬くんの出す空気がたまらない。


「シラフなのに、ずるい。」
「僕酔ってても、莉子さん以外の人とはキスもその先もしないから。」


やめて、それ以上言わないで。そっと壱馬くんの見た目よりも厚い胸板を手で押す。どんなに自分を責めても、結局自分を止めることができなかった。こんな弱い私、誰にも愛される資格なんてないのに。


「もう、やめなきゃ。これ以上壱馬くんを傷つけられない。私結婚するの。私の未来にあなたはいない。それが私の答え。本当にごめんなさい。」


壱馬くんの腕がゆっくりと離れていく。今なら私も壱馬くんも、引き返せる。これでいい。大人なんだから、これでいいの。ガチャリとドアを開けて、一人助手席を降りた。