「私も嬉しい、かな。」
そう言うと、その顔を赤くして照れ笑い。
「よかった。莉子さんが笑ってくれて。」
そんな言葉をくれて優しく微笑む壱馬くんの背中をそっと押した。こっちが恥ずかしくて耐えられそうもなくて。そしたらその手を掴んで個室の中に誘導された。当たり前に壱馬くんの隣に座らせられた私に直ぐおしぼりを出してくれる。中に入ると汐莉の北人くんがニッコリ笑顔でペコっと頭を下げた。あーこの子見たことあるなぁ。香澄の樹くんも真顔で頭を下げた。無愛想、樹!気にしないって顔で隣に座ってニャンニャンしている香澄に神谷教官ごめんね!って心の中で謝った。
「ほんとに友達だったんだ、北人くん達と。」
「え?北人?」
「うん。汐莉が友達かもよ?って言ってたらから。」
「俺がいなくても莉子さんここに来たんですか?」
「え、いや…。友達だと思ってここに来た、かな。」
「ならいいけど。」
…ならいいの?え、なに?なに?なにっ!?壱馬くんはどうやら大食いらしく、既に開いたお皿も沢山あるのにそれでもまだ料理をどんどん注文してそれを胃の中に落としていく。酒も、強いのね。若いせいか、我武者羅に食べているようでなんだか可愛い。直人はもう自分の量を分かっているから無理強いはしないし、うまく飲んでるなぁなんて思った。
「莉子さん、彼氏いますか?」
「…え?」
お酒が入ってるせいか、壱馬くんも饒舌で。そもそも普段は車の中でそんな話題は間違っても出てこない。だからか質問が頻繁に飛んでくる。嘘はいけないよね。ほんのり汐莉や香澄を見ると、まじまじとこっちを見ている。私がなんて答えるのか、耳をダンボにして待っているように見える。ねぇ今、助け時!なんて目で合図を送ってもジッと見ているだけで、こりゃだめだって諦めた。
「い、るよ。」
だから素直にそう答えると、壱馬くんがほんの少しだけ苦い顔を浮かべた。
「そこは、かな?じゃないんだ。残念。」
「…あの壱馬くん?」
「冗談です。妬いただけです。分かってますよ、莉子さん綺麗だし、男ぐらいいるって。それでも俺、諦めませんから。」
そう言うと、半分以上残っているジョッキのビールを一気に飲み干した。…諦めないってどーいうこと?