「海青、可愛いくないすか?」
…北人さんって、言われるもんかと思ってたから拍子抜け。海青ね。
「それは海青に頼まれたの?」
「まぁそんなとこっす。お似合いっすよ、海青とゆき乃先輩。あいつ優しいし、女は優しくされてなんぼ、でしょうし。ワガママ言っても海青ならなんでも受けとめてくれる、え、先輩?」
わたしが思いっきり冷めた目で見ていたからだろうか、慎が不意に言葉を止めた。でもそうじゃなかったみたいで。
「なに、泣いてるんですか?」
慎に言われて瞬きをすると、頬を涙が伝った。嘘でしょ。
「あ、違うの。なんかごめん、昨日ちょっと色々あって。」
真っ直ぐにわたしを見つめる慎は目を逸らすことなく小さく言ったんだ。
「ごめん俺は、莉子先輩が好きだよ。」
分かってるわよ、そんなこと。だけど言葉になんて出せなくて。昨日北人とあんなことがあったけど、やっぱり心の奥底では慎のこと、好きになってた自分がすごく嫌で。
保健の先生がいなくてよかった。立ち上がったわたしは「違うから、本当に。そんなんじゃないから。」苦し紛れにそう言うと、保健室を出た。
「、北ちゃん、」
「迎えに来た。俺の可愛いゆき乃が心配で。」
差し出された手を握ったらそのまま無言で歩きだした。