「…別に好きって程じゃないよ。わたしなんか恋とかそーいうの疎いし、男と付き合ったことだってないし。」
「うん…。」
「莉子みたいに小さくて可愛くないから無理なのも分かってる。女らしくもないしガサツだし…。でも莉子みたいに見つめられたらいいな…って、」
「翔吾?ちゃうか、あっちか…あーそっか、そっちかぁ…。」
言わずと分かったらしい壱馬は一度天を仰いだ後、戻ってきて真っ直ぐにわたしを見る。
「なんでそこいくん?って思うねんけど、そーいうもんやろな、恋なんて。自分でもどうにもできんことだらけや、恋なんて。」
壱馬は、わたしには分からないような恋を沢山してきているのかもしれない。こーいう話を笑わずに、茶化さずに真面目に聞いてくれるとこ、良いとこだよね、壱馬の。
「けど一つ言うとく。恋愛に間違いも正解もないと思うねん、俺。ゆき乃が今慎のことを間違いやって思ったその心がもう、慎以外の奴に向いてる...そーいうことなんちゃう?」
壱馬の言葉に瞬きを繰り返す。
...え、すでに北人がいるの、わたしの中に?
「ただいまーHONEY!」
発音よくそんな言葉を飛ばして北人がパンを片手に教室に戻ってきた。今の今でカァーって血が顔に集中するのが分かる。やば、絶対赤くなってるわたし!恥ずかしい...。
「ん?あれ、赤いけど、大丈夫?」
首を傾げて顔を覗き込もうとする北人から慌てて逃げて壱馬の後ろに隠れた。だから壱馬はそんなわたしの態度に爆笑していて。
「分っかりやすいなぁ、ゆき乃。」
...笑われた。