お昼休みが終わる直前、雨雲を背負った莉子が戻ってきた。ちょっと複雑そうな表情の翔ちゃんと一緒に。
「早退する。」
席に着くなり鞄を手にしてそう言った莉子。
「え?莉子?どう、したの?」
「陸先輩、女いた。」
思わず翔ちゃんに視線を向けるも、こっちを見てはいなくて。咄嗟に莉子の腕を掴む。でもこんな時、なんて声をかけてあげたらいいのか分からなくて何も言えないわたしに、莉子はそっと手を剥がして「ごめん、一人にして。」悲しそうな声が届く。
「莉子、」
「心配しなくていいから。」
「でも。」
振り返ることなく教室を出て行く莉子にわたしは結局何もしてあげられなかった。
「翔ちゃん、何があったの?」
「え?」
「陸先輩、彼女いたこと知ってたんでしょ?」
学年すら違うけど陸先輩と仲がいい翔ちゃんが知らないわけない。
「彼女ちゃうねんあの子。ただの妹。溺愛しとるけど、陸さん。」
「...妹!?莉子は彼女だと思ってショック受けてたのに、教えてあげなかったの?」
翔ちゃん酷い!そう言おうとしたら、ジロっとわたしを見て「莉子手に入れる為ならなんでもする。」真剣な表情でそう言ったなんて。
優しい翔ちゃんは、莉子の事になると時々ブラックが現れる事には薄々気づいていた。でもこんなの違う。
「見損なった。堂々と勝負できない翔ちゃんなんて、負けるに決まってる。」
悔しくて悔しくて。何もできなかった自分が悔しくて、翔ちゃんに当たり散らすわたしも、最低なんだ。怒り浸透、立ち上がろうとした翔ちゃんの肩を抑える北人が小さく言ったんだ。
「ゆき乃に手かけたら俺が許さない。」
やっぱり胸が熱くなった。北人がどーしようもなく、かっこよく見えてしまうんだ。