「おい、無視すんな。」
樹の横からスリーポイントを投げてくる北人。げ、追いかけてきた!?あえて聞こえないフリをしているわたしはガコンとゴールポストに当たって弾かれたボールを追いかける。ちょうど反対側からきた慎にぶつかりそうになって慌ててくるりと向きを変えた。
あからさま、すぎた?
「ゆき乃先輩ごめんね、大丈夫?」
気まずさ120%の慎が心配そうにそう言った。だけど慎の頭にはここにいない女バスの莉子の事しかないんだって。わたしに聞きたくても聞かないのは慎の優しさだと思う。だから...
「慎、莉子お昼で早退した。いつも通り電話かけてあげて。」
「...うん。ありがと、先輩。」
ちょっとだけ安心したように笑う慎に、胸がチクリと痛む気がしたけど、前みたいな苦しさはなくて。そこにはやっぱり北人がいるのかもしれない。
「...たく、お人好し!」
ポカって分かりきった北人の痛くないゲンコツ。でもその手はそのままふわりとわたしの髪を優しく撫でた。
「だってそれがわたしだもん。」
「うん、知ってる。それがゆき乃。俺が好きになったゆき乃はそーいう子。」
ニコッて笑った北人はサラリと「好き」って告げると満足気に樹の方に向かっていって「樹マンツーやろーぜ!」って。当たり前に北人に向かっていく樹は、さも楽しそうで。
て、ゆうか、こんな所でサラリと告白とか、本当ズルいよ、北人。
わたしがどんなに頑張っても慎に言えなかった一言を、こんなにも簡単に言うなんて...ズルすぎる。
どんどんわたしの中が北人しかいなくなっちゃう。