「ゆき乃ちゃーん、筋トレ使ってもいいのー?」
「え、あーうん。大丈夫だよ!って海青また筋トレ?」
既に身体ができてると思われる1年の海青は、バスケ部の練習が終わるとほぼ毎日自主練で筋トレをしていた。無言で海青の後をついていくのは同じ1年の樹。ぼっさぼさの髪で顔の半分が隠れていて分厚い眼鏡をかけているせいか、樹がどんな顔なのか今だに分かっていない。基本的に人とほとんど喋らないし暗いし、なんとなく距離をおきたくなるような不思議な子。
「樹もやるの?」
「はい。」
喋り方もボソボソで、たまになに言ってるか分からないけど受け答えはちゃんとしているからまぁいいかって。体育館の2階にある筋トレルームへと続く階段を登る二人を見送ってわたしはこぼれたボールをトレイに集めだした。
「うわ、雨かよ。」
同じようにわたしを手伝ってくれるのは、キャプテンの北人。可愛い顔の北人は女子にモテる。その優しい性格もあるんだろうけど、去年のバレンタインデーには抱えきれないぐらいのチョコを貰っていた。彼の彼女になったらそれは幸せなんだろうな?なんて、無意識に思えるほどに。
「傘、ないの?」
「…いや、まぁそんなもん。」
「やみそうもないね。」
「だなー。駅まで一緒に帰る?」
「え?」
「たまには帰ろうよ、二人で。」
…北人に言われて小さく頷く。莉子は慎が送るだろうし、焼き芋二人で食べちゃうんだろうし、やっぱりそこに入っていけないし。
「うん。帰る。わたし傘あるから安心して。」
「やった、ゆき乃と相合い傘!」
何を喜んでいるのか、北人の笑顔にちょっと救われるなんて。とりあえず筋トレしてる二人に鍵を渡さないと!って、2階に行くと無心で身体を動かしている。会話ないなー。
「海青、樹。わたし先に帰るけど、まだ残ってやってる?」
「げ、ゆき乃ちゃん帰っちゃうの!?」
子供みたいに眉毛を下げて手を止める海青に比べて、樹は手も足も止めずに「やってきます。」って一言。
「うん、雨強くなってきたし。二人とも風邪引かないようにしてよ?」
「わかったー。ね、ゆき乃ちゃん!2月14日は、俺のために空けといてね!」
ニコッて微笑む海青に一瞬キョトンとしたものの、2月14日って、バレンタインだし。