「その日はちょっと空いてない。」
冗談で返すと立ち上がってわたしの所に駆け寄ってきた。
「ちょっと俺、聞いてない!聖なる日に誰と過ごすのぉー!?」
「はは、チョコはちゃんとあげるからね!」
誤魔化すように背伸びをして長身の海青の頭を撫でると、ちょっと赤くして視線を逸らす。
「ゆき乃ちゃんのスキンシップって、時々ずりーの。」
「え?」
「なんでもないっ!鍵受け取る。」
スっと大きな手をわたしに差し出す海青に、部室の鍵を落とした。その手をキュッと上から握って笑う海青は、すぐに手を離すとまた照れ臭そうに鼻を啜って戻っていく。
樹に視線を向けると、ぺこっと頭を下げた。
階段を降りると、北人がわたしをまっててくれて。ボールを1つクルクル回しながら「行こ。」小さく呟いたんだ。
「すげー降ってる。あ、濡れない?大丈夫?」
「うん。北ちゃん右肩絶対びしょびしょでしょ?」
「そんなことないって。」
トンッて軽く身体を寄せてわたしを脇腹で啄く北人。小さな折り畳み傘を持ってくれて駅まで歩く。
「北ちゃんファンに見つかったらどつかれそうだなぁ。」
「誰もいないよ、もう。あー疲れた。今日もハードだったなぁ、練習。」
首を回して息をつく北人は、わたしの歩幅に合わせてゆっくり歩いてくれる優男。
「2月14日はギャラリー多そうだなぁ。面倒くさい。キャプテンが人気だから困る。」
「いやいや、どー見ても真剣佑のが人気っしょ。俺、佑の歓声で耳が壊れるかと思ったもん。」
「あー佑がいた。佑はちょっと次元超えてるからアイドルみたいなもんだもんなぁ。それこそ面倒くさい!練習試合とかしないよね?」
うちのエースの真剣佑は2年全体でもナンバーワンの人気を誇っている。それに比べたら確かに北人は落ちるけど、それでも数多くの女子のハートを掴んでいるのは間違いない。