「はい、海青!」
「…え?」
部活終わりにバスケ部員に配っている義理チョコ。海青にも勿論用意しといてそれを手渡すと「貰えないと思ってた俺…。」なんて言葉。
「あげないわけないでしょ!」
「そっか。義理でもなんでも嬉しい。ゆき乃ちゃんがくれたもんなら。」
照れくさそうに髪をかきあげる海青は嬉しそうにそれを鞄に仕舞い込んだ。ちょうど隣にいた樹にも同じものを差し出す。
「樹もどうぞ。」
「…え?」
「今日はバレンタインだよ。だからはい、チョコ。」
まじまじとそれを見つめた樹はふわりと笑う。
「ありがとうございます。」
…ちょっと待って!ほんの一瞬見えた樹の目。ソファーに座ってる樹の前、立膝のわたしは樹のボサボサな前髪を手で退かした。初めて見る樹のオデコと目。「え、ちょっと、」そう言う樹から分厚い眼鏡をぶんどる。
「…これは危険。樹…超絶イケメン!!!!なんでこれ隠してるのっ!?」
騒ぐわたしの口を手の平で押さえる樹は真っ赤で。イケメンに口抑えられて当たり前に黙り込むわたしは、そのまま真っ直ぐに樹を見つめる。吸い込まれそうなシュっとした目元と、整いすぎてる顔立ち。ちょっとだけぽってりした唇が今更ながら樹を色っぽく見せてるなんて。
「離せ、」
「え、ワイルド系!?やばば…。」
「やめろ、顔見んな、」
「勿体ない!」
「いらない、こんな顔。」
「どうしてよ?」
「苦手なんだよ、女。だから言わないで、これ。」
イケメンにはイケメンの悩みがあるのだろうか?やっぱり勿体ないと思ってしまうわたしは樹の前髪をさり気なく整える。だけど次の瞬間、ガバって手首を掴まれて、「責任とってくれんの、ゆき乃さん!」…顔が触れ合えそうな程近くでそんな言葉。
…どうしよう、ドキドキする。