「島が見えたぞー!!!」
「よっしゃー!」
今日も今日とて、ハートの海賊団の船は賑やかである。というのも久しぶりに島へ上陸できるからだ。かくいう私もおいしいものが食べられるとわくわくしている。港には停泊している船が多数あり、栄えている島なのだろうと思った。碇をおろして上陸の準備をする。その間に島の偵察を終えた船員たちが戻ってきたところで、キャプテンからの指示が出た。
「ログが貯まる二日後に出航だ。海軍の駐屯基地がある。騒ぎは起こすな」
「「「アイアイキャプテン!!!」」」
見張りを決めて交代で島へ出ることになり、久しぶりにフードを被る。私はペンギンと武器の調達だ。武器選びには刀と銃のどちらも扱う私を連れて行く方がいいと判断したのだろう。弾の補充もしたかった私にとってはちょうどよかった。船を降りようとしたところでキャプテンも来ることになり、三人になる。
「俺も行く!」
「俺もって、ベポは武器使わないだろ」
「#名前#の武器一緒に選ぶ!」
「#名前#のじゃなくて船に乗せる武器だっつの!」
そしてなんだかんだベポも含めて四人。街を歩いてみると、そこはたくさんの人で賑わっていた。観光地としても知られるこの島にはキャプテンが言った通り海軍の駐屯基地があり、治安は悪くない。偽物の宝石を売る店や明らかにぼったくりだろうと思うような店もあるがこれだけの店と人がいれば分かりやしないだろう。この人だかりに紛れて一体いくつの海賊がこの島にいるのかと考えていた時、急に視界が開けて再び暗くなった。同時に頭に重みを感じて手を伸ばす。
「…キャプテン、顔が見えちゃってますよ」
「俺は隠すために被ってんじゃねぇ」
「私のはフード付いてる…ていうか、わざわざ取る必要あります?」
「ちょうどいい位置に頭があったからな」
「帽子置きにするのいい加減やめません?」
もう慣れてしまったキャプテンのこの行為に文句を言いながら隣を見上げれば、当の本人は涼しい顔をして前を見ていた。一瞬だけ私に視線を寄越したかと思うと、ぐいっと帽子の鍔を下げられる。相変わらずキャプテンの行動は読めないけど、楽しんでいることだけは分かった。
そのまま一歩路地裏へ入れば、雰囲気は一変して景色がガラリと変わる。すれ違う人間も一般人とは言い難いような人ばかりだ。
「キャプテン!俺これ欲しい!」
「お前、武器使わないだろ」
店に入ると、ベポが大きな斧を見つけて持ってくる。ペンギンと同じ言葉を口にしたキャプテンにショックを受けたベポはとぼとぼと元の場所へ戻しに行った。なかなか品揃えのいい店のようで、変わった武器も並んでいる。先程却下されたベポも次の武器を見つけて楽しそうだ。
「お前のその銃はあまり見かけないな」
「リボルバー式の銃は流通が少ないらしいですからね」
銃を見せると、キャプテンは手に取って興味深そうに眺める。なんというか、
「キャプテンはいつもの刀持ってる方がかっこいいなあ」
キャプテンに銃は似合わないですね。
「………あれ?」
なんだろう、今の違和感。そしてなんだろう、この空気。シャチとペンギンはポカンとしているし、キャプテンは帽子を被っていないのに鍔を下げるような仕草をしてバツが悪そうな顔をしている。そしてそれから数秒後、私はとんでもない間違いをしてしまったのだと気づいた。
「すみません、心の声と間違えました!」
「素直かよ!!!」
「あんな純粋に言われたら照れますねキャプテン」
「黙れペンギン」
ひょい、と頭の上にあった帽子がキャプテンの元へ戻っていく。
「買うもん買ったなら出るぞ」
「あれ?キャプテンどうしたの?」
何も知らないベポは買った武器を持ちながら不思議そうにキャプテンを追いかけていった。カラン、と寂しげにベルが鳴って扉が閉まると両隣にいるシャチとペンギンが私の背中を優しく叩く。
「面白いもんが見れたな、ペンギン」
「俺たちバラされねぇかな、シャチ」
なんだかよく分からないが、キャプテンは怒って出て行ったわけではないらしい。軽くなった頭に手を当ててキャプテンのそばまで走ると、なぜか頭をぐしゃぐしゃにされてしまった。