「……私はついでですか、キャプテン」

「何言ってんだ」

宝の地図を握ったままじとりとキャプテンを見た。否定も肯定もしないキャプテンに、それがただからかっているだけなのだと分かっていても頬を膨らませてしまう。どうやら宝があると知っていたのはキャプテンだけだったらしい。

「この辺りには三十以上もの島がある。一つ一つに名前はない。あるのはあくまで全部ひっくるめた地域の名だけだ」

私がたどり着いたのはその中でも一番奥にある島で、なぜそれだけの数がある島の中からピンポイントでこの場所が分かったのかといえば私が朝ご飯用に獲った魚を焼いていた火のおかげだった。遠くから煙が上がっている場所を確認し、島が複数あるおかげで入り乱れている潮の流れを回避しながら潜水してここまで来たのだという。

「俺も噂でしか聞いたことがないが、その宝の島にたどり着くのも運次第らしい」

確かに一つ一つの島を回るとなると相当な時間を体力を要する。それに加えて無人島で食料の調達も難しいのだ。宝があると知っていても好き好んでここに来る海賊はそうそういないだろう。

「それで?お前が持ってるそれは地図か?」

「この先にある建物の地下室で見つけたんですけど…」

バサリと地図を広げてキャプテンに差し出す。お宝お宝と騒ぐみんなの中心で、冷静に地図を見て考え込むキャプテンの姿はなんだかシュールだ。

「一通りこの島は回ったんですが、このバツ印のとこには何もなかったんです」

「呑気に一人宝探ししてたわけか」

「それはすみませんとしか言えないですけど!」

「うちのクルーは仲間を見捨てるようなことはしねぇ。助けが来ないなんて諦めてみろ。こいつらの説教が待ってるだけだぞ」

「……はい、身を持って知りました」

再び地図へと視線を戻す。キャプテンは地図を裏返して紙を撫でると、なぜか海へ向かった。

「え!?キャプテン何してるんですか!?」

「見てりゃ分かる」

水面に地図をつけたキャプテンは滴る水を振り払う。紙を水につけるなんてと思いながらキャプテンの元へ向かえば、一つしかなかったバツ印がもう一つ浮かび上がっていた。地図にこんな仕掛けがあったなんて。

「キャプテン、悪い顔してますね」

「俺は元々こういう顔だ」

「やっぱり宝目当てでこの島に来たんじゃないですか!」

「つまんねぇこと言うより先に頭動かせ」

「わっ!」

キャプテンが被っているモコモコの帽子を乱暴に頭の上に乗せられる。文句を言うより先に帽子を脱ごうと触ってみると思いの外触り心地がよく、キャプテンに取られるまでこのままにしておこうと背中を追った。

「#名前#、キャプテンに帽子もらったの?」

「違うよ、頭を帽子置きにされてるだけ」

「そうなのか…でもすごく似合ってるよ!」

ベポはニコニコと笑いながら私の隣を歩いている。先を歩くのは地図を持ったキャプテンで、私たちはみんなで浮かび上がったバツ印へと向かっていた。しばらくするとキャプテンが立ち止まり、宝がある場所に着いたのだろうと周りを見渡す。雑草が生い茂る中、一本だけ生えている木に目がいった。

「見た感じ宝を隠すような場所がないってことは…埋まってるんでしょうね」 

「どこ掘りゃいいんだ?」

ペンギンの言葉に、ザクリとスコップを地面に刺してシャチがため息をつく。するとキャプテンは黙ったまま、私が気になった木へと歩いて行った。

「おそらく、ここだ」

見てみると、地面から盛り上がった木の根本にバツ印が掘ってあるのが見える。俄然やる気を出したみんながそこを掘ると宝箱が見つかった。

「……ふふ」

「?どうしたんだ、#名前#」

「ううん、小さい頃のことを思い出してね」

「なんだよ、宝埋めて遊んでたのか?」

「本当に宝を埋めてたの」

満足そうに笑うキャプテンと、宝を見つけ出したことで大騒ぎのみんな。今日は宴だ!と盛り上がる中、一人懐かしい気持ちに浸っていた。



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