地図を頼りに島を散策して分かったことは、この島が無人島だということだけだった。地図にはご丁寧にバツ印までついているというのにその場所へ行ってみても同じような建物が建っているだけで何もない。初めに見たような地下室もなく、周りにも特に怪しいものは見当たらずただ首を傾げるしかなかった。地図を逆さにしてみても、ひっくり返してみても、一向に突破口は見当たらない。
「デタラメとは思えないんだけどな」
根拠はなくただの勘だが、必ずこの地図が指し示す場所に宝があると自信を持って言えた。地図に嘘はないはず。となれば何か私が見落としているものがあるのだろう。結局宝を見つけることができないまま、森の中で一夜を過ごすこととなった。
そして翌朝、頭がスッキリしたところでもう一度地図を眺める。誰かに聞こうにも今私の周りには誰もおらず、自分でこの地図の謎を解くしかなかった。宝の地図を見つけてすっかり頭から抜けてしまっていたが、ふと自分が一人なのだと実感する。元々一人で行動していたとはいえ、最近はハートの海賊団に入り常に誰かがいる環境にいたせいか久しぶりに寂しいと感じた。
「……ずっと、いれるかな」
ザパン、と一際大きな波が砂浜に打ちつけた時だった。
「ん?」
波の音が変わり水面がゆらゆらと揺れる。海に目を向ければ浮かび上がってきた黄色い船艦に、思わずポカンと口が開いた。
「#名前#〜!!!」
「ベポ…!」
ピョン、と船から飛び降りたベポに思い切り抱きつかれる。呆然としている私に、心配させんじゃねぇよと次々と船からみんなが出てきた。
「どうしてここが分かったの?」
「フフン、俺たちの腕舐めんじゃねぇぞ!」
「俺だって航海士なんだから!」
そうこうしているうちに再び誰かに抱きつかれる。鼻を啜る音が聞こえて、泣いているのだと分かった。
「このバカ!」
「え!?」
勢いよく顔を上げたイッカク。目が合うとわんわんと泣き出してしまい、思わずベポを見た。
「イッカクはね、#名前#のことすごく心配してたんだ」
「私のせいで仲間が死ぬなんて…そんなの嫌に決まってるでしょ!」
「仲間?」
思わず目を見開くと、時が止まったように辺りがシンと静まり返る。しかしそれも一瞬。イッカクに胸ぐらを掴まれぐわんぐわんと大きく揺らされた。
「アンタは何のつもりでこの船に乗ってたの!?」
「待っ、違うのイッカク!」
「何が違うのさ!」
「話を聞いて…って、うわ!」
ぐいっと後ろに引っ張られて何かにぶつかる。見上げるとそこにはキャプテンが口を真一文字に結んで私を見下ろしていた。
「少し落ち着け」
「キャ、キャプテン…」
肩を上下させるイッカクは、呼吸を整えて私を見る。後ろにキャプテンがいることを感じながら、恐る恐る私は口を開いた。突然この船に乗った私に困惑している船員がいることは分かっていたし、船員の中で唯一の女性であるイッカクに警戒されていることにも気づいていた。まだ仲間として認められていないのだろうと感じ、それも仕方がないことだと。彼らはハートの海賊団。命を預け、共に戦う仲間なのだ。海賊の中では裏切りも多く、イッカクたちはキャプテンや仲間のことを大切に思っているのだと尊敬すらした。
「アンタは私たちの仲間だよ…#名前#」
イッカクの言葉が、じんわりと胸の中に広がっていく。緩んでいく口元をおさえることもできず笑うとイッカクも笑顔を返してくれた。
「キャプテン、みんな…心配かけてごめんなさい」
私を見つけることなんて不可能に近いと諦めておきながら、こうして見つけ出してくれたことがこんなにも嬉しい。出航の準備を進めるみんなに続いて歩き出そうとした時、キャプテンが口を開いた。
「いや、出航はまだだ」
「キャプテン?」
見るとキャプテンは笑っている。みんなが首を傾げる中、刀を肩に担いだキャプテンは島を指した。
「この島には宝がある。それを見つけるまではこの島から出ねぇ」
宝!?と目を輝かせるみんなに、私は地図を取り出したのだった。