雄英高校
漢飯 昼休み、メシ処。
相変わらず学校中の生徒が集まってごった返している。
ウンザリしそうだが爆豪は一点だけ見ているので問題なかった。人にぶつかったり順番を抜かされたり水を零しそうになったりしながら要領悪くトレーを運んでいる西岐をテーブルから眺める。見ていて全く飽きない。あの要領の悪さでどうやって生きてきたんだろう。
切島がじれったくなって飛び出していく。
トレーを持ってもらって手ぶらでテーブルにつく。
ちなみに西岐は切島を筆頭に爆豪組から熱烈に誘われて昼食を共にすることになった。もちろん誘いをかけたメンバーに爆豪は入っていない。
このことで女子から激しいブーイングを受けたが譲る気が毛頭ないらしい。少なくとも今日は。
全員が揃ったところで食べ始める。
西岐はグラスに刺さっている細長い野菜をポリポリとかじる。もしかしたら小動物なのかなと一瞬錯覚する。トレーには野菜スティックのほかには水しかない。
「昼メシがそんだけで足りるのかよ」
爆豪の気持ちは瀬呂が代弁してくれた。
「うん、でもパンケーキ食べようか迷った」
「女子かッ!!! 男なら肉を食え肉を!」
切島は自分の皿の唐揚げを箸でつまんでぐいっと西岐に差し出す。
対して、大丈夫を連呼して逃げを打つ西岐。
「あのね、朝はしっかり食べたから、しょうじくんが作ってくれて食べたの、だから今日は食べたほうなんだよね」
その場の空気が固まった。
本人は衝撃の言葉を放った自覚がないのか『あれ?』と首を傾げている。
ゆっくり整理しよう。
朝食を障子に作ってもらって一緒に食べたわけだ。
だめだ、考えられない。
「ッんで朝メシ作ってもらうんだよ、どんな状況だッ!!」
「え? あ、その、昨日泊まったから……」
思わず叫ぶと西岐は急に委縮した。
「爆豪、あからさまな嫉妬でれぇをビビらせんなよ」
「ちげーわ!!」
「今度俺んちにも泊まりにおいでよ」
「俺んちでもいーぜ」
しまったと思った時にはもう声が出ていた。大きすぎたと思った時には遅かった。
反省の気持ちがないわけではないが切島の突っ込みは素直に聞けない。
復活の早い上鳴と瀬呂が悪ノリして場の空気がどうにか戻る。
西岐の口元に笑みが戻って爆豪もホッとした。
――のも束の間。
突如、警報が鳴り響いた。
create 2017/10/02
update 2017/10/02
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