USJ



 その日は夢見が悪かった。
 苦しさにさいなまれて身をよじり苦痛に全身の筋肉を歪ませる。そして感情が弾けるようにして目が覚めるのだ。
 飛び起きるたび全身にびっしょり汗を掻いているのに夢のことは覚えていない。恐怖心の残骸だけが脳にこびりつく。寝ても寝てもまた飛び起きる。自分の顔に触れると汗なのか涙なのかわからないもので濡れていた。
 これはきっと警告なのだ。
 気をつけろと。まだ警戒が足りないのだと。
 理解した、理解しているが夢を憶えていなければどうすればいいのかわからない。
 いつもそうだ。何かを予知したときそれがいつどこで起きてどうなるのかまできちんとわかるわけではない。その場面の片鱗に辿り着いた時初めてこれがそうだったのかと気付く。
 しかしそれでは遅い。あまりに無力だ。
 何の役にも立たないものを見る意味があるのだろうか……。
 けれど西岐は、跳ね上がる心臓を無理に抑えつけてでもどうにか眠りにつこうとする。少しでも夢を見ていられるように。僅かにでも覚えていられるように。
create 2017/10/02
update 2017/10/02
ヒロ×サイtop