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対峙 "視"えたのは外れたゴーグル。飛び散った血。ぐにゃりとした腕。
見ていたのは死柄木が触れた相澤の肘が崩れたところ。その手がまっすぐに伸びて蛙吹の顔面に張り付くところ。
現在の視界と予知した場面が重なりあう。
気付けば西岐の顔に死柄木の手が触れていた。
一瞬の間に西岐の身体は半分水に浸り背中で蛙吹を押しのけていた。
指の隙間から死柄木と目が合う。多少なり動揺が見て取れた。西岐が突然現れて標的がすり替わったことに対してか、それとも五指すべてが触れているのにも拘らず西岐の顔が崩れないことに対してか。
「……ほんっとう」
死柄木が振り返った先に抹消を発動させている相澤がいた。
「かっこいいぜ、イレイザーヘッド」
生徒を守らんと抵抗する相澤を嘲笑うかのように脳みそヴィランが力任せに地面に叩きつけている。
何かがじわじわと沸き立って競り上がるような、脳の奥が痺れるような、目の後ろが冷えて張り詰めるような感覚。
自分の顔に敵の手が張り付いていたことなど気にならないほどのなにかだ。
「手っ……放せぇ!!」
反射的に緑谷が死柄木に殴り掛かる。
身体に張り付いていた水が勢いではがれて飛沫となって舞う。
緑谷の拳がヒットした余波は水面に大きな波を立て照明のガラスを霧散させた。凄まじい威力のパンチだ。
だがそれを受け止めたのは死柄木ではなく脳みそヴィランだった。しかもあの強烈な拳を真正面から受けていながら全くダメージがない様子で。
ヴィランの大きな手が緑谷を捉えようとし、死柄木の手が峰田と蛙吹に伸びる。
小さな火花がいくつも弾ける。
それは西岐がばら撒いた水飛沫から起きた。放てる限りの細胞電気を放った水を飛沫にしてばら撒いたのだ。時間差で相手に触れた水飛沫から通電し相手は動けなくなる。
たったわずかな時間でしかない。
水の中にいたために同じく動けなくなった蛙吹と峰田を引き寄せ、緑谷へと手を伸ばす。一人では全員を抱えるには力が足りない。水が纏わりついて思うように動けない。緑谷の腕を掴むが反対側をヴィランに掴まれていて引き寄せられない。
火花が散る。電気が消えてしまう。
「お前、さっきもいたよなぁ。なぁ?……なんかおかしくないかお前」
死柄木の手が再び西岐の顔に覆いかぶさる。
ヴィランごとでも構わない。瞬間移動しようと口を開きかけた時。
響いたのはドアが吹き飛ぶ音、そして。
「もう大丈夫。私が、来た」
トップヒーロー・平和の象徴の声。
create 2017/10/11
update 2017/10/11
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