USJ
収束



 土埃にまみれて立っているオールマイトの姿は眼光こそ威圧感を保っているが、西岐の目にもダメージが見て取れた。いや、ダメージ以外にも何か理由があるのかもしれない、時間制限のようなものがおそらくあるのだ。
 授業以外で時折目にするやせ細ったオールマイトのもう一つの姿を思い出す。あの姿を死柄木たちに晒してしまうのは不味いのではないだろうか。

 自分にできることを、できる瞬間に――。
 噴水の陰に身を隠しつつ死柄木たちの動向を伺う。
 次の行動に迷い、思考が混乱して錯綜し一時は撤退も望めるかと思ったがどうやらオールマイトをしとめることを諦める気はないようだ。
 オールマイトに向かって飛び出す死柄木と黒いモヤのヴィラン。
 西岐はすぐ追った。
 動いている人物に張り付くように瞬間移動するのは難しい。出来るだけ近くに移動してあとはとにかく走った。
 ワープゲートが広がりオールマイトに迫る。
 立ちはだかるようにワープゲートの前に飛び込んできたのは緑谷だった。
 死柄木がモヤに手を突っ込み、ワープゲートから突き出る。
 緑谷の顔を掴もうと伸びる。

 そこから先は1ミリも動かせない。
 血に濡れた手で死柄木のもう片手をしっかり掴んでいた。直接触れての《抑制》と《封印》だ。
 死柄木の目が西岐を見る。

「なんだよお前、なんなんだ?」

 狂気に満ちた目に間近で覗き込まれ悪寒が走る。だが絶対に手を離さない。離さない限り彼は動けないし個性も使えない。
 プロヒーローが来るまでの耐久勝負だと腹をくくった。
 けれどそう長く時間はかからなかった。
 発砲音が鳴り響き死柄木の身体が反動で揺れる。続いて何発も発砲音がして聞きなれた委員長の声が響き渡る。

「1-Aクラス委員長・飯田天哉!! ただいま戻りました!!!」

 出入口を見ればプロヒーローである雄英教師陣が何人も揃っていた。
 先程の発砲音はスナイプが放ったもののようだ。正確無比な銃弾が何度も死柄木を撃ち抜くがそれらが西岐に当たることはない。
 ようやく手を放し距離を取ろうとした西岐の手を今度は死柄木が掴んだ。驚いている間に黒いモヤが死柄木を覆い始める。スナイプの弾はもう当たらない。
 13号のブラックホールに吸い込まれまいとモヤが渦を巻いて小さくなっていく。

 思いのほか強く掴んで離さない手に、奥の手と西岐は噛みついた。
 相手もまさかヒーロー志望の子供がそういう行動に出るとは思わなかったのだろう。緩んだ手を振り払い瞬間移動で抜け出す。

 着地点は階段脇。
 黒い渦が小さくなり消えていったのを見届けて一気に息を吐いた。
create 2017/10/12
update 2017/10/12
ヒロ×サイtop