USJ
とあるバーで とあるビルのワンフロア。
クラシックなバーの床近くに黒いモヤが渦状に広がる。
黒霧から這い出た死柄木は痛みに呻いた。
プロヒーローの一人が放った弾丸は外れることなく身体を撃ち抜き確実にダメージを与えた。
「完敗だ……脳無もやられた。手下どもは瞬殺だ……子供も強かった……」
一言一言吐き出すたびに自分の言葉で思い知ってしまう。
屈辱、やりきれなさ、苛立ち。
そういったものがない交ぜになって大本命だったオールマイトへ向かっていく。
「平和の象徴は健在だった……! 話が違うぞ先生……」
カウンターの端に置かれたモニターに不満を投げかけるとすぐさま返事がきた。
先生とは別の人物の声が割って入ってくる。
ごちゃごちゃとどうでもいい話だ。黒霧が丁寧な返答をしてくれるのをいいことにほとんどを聞き流していた。
しかし『パワー』という単語だけが心に引っかかる。
「そうだ……一人……オールマイト並みの速さを持つ子供がいたな……」
関心があるのか無いのか判断のつかない相槌が返ってくる。
「あと、そう……変なやつがいたよ。瞬間移動と、動きを止めるのと……たぶん個性を消す個性を持ってた……。なぁ……おかしくないか?」
今度は返事がなかった。
何とも言えない気持ちが胸のところで暴れている。
そうだ、あれに何度となく邪魔をされた。あの邪魔さえなければ子供もオールマイトも殺せていた。
血の付いた手で触られた。
しかも噛みつかれた。
振り払えないものが手にくっついている気がして軋むほど強く握る。
先生が死柄木の気を宥めるように諭すように言葉を発する。それらの音はとても心地よく耳に滑り込み脳を湿らせ心を落ち着かせた。
そうだ、次は必ず――必ず殺してやろう、平和の象徴オールマイト。
create 2017/10/12
update 2017/10/12
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