君にしか甘えられないんだ (7/8)






──そして、夕飯を食べ始めて暫くしてから私はあること思い出して湊に問いかけた。


「…ねえ、湊。」
「ん?」
「聞きたいことがあるんだけど…。」
「なに?」



湊に聞きたいこと──。

それはお昼休憩の時に香奈と話していたことだった。



「…湊ってさ、私以外の女の子にはクールなの?」
「…は?」


私がそう問いただすと湊はおかずを食べていた手を止め、驚愕きょうがくしたように頓狂とんきょうな声を出した。


「ねえ、他の女の子にはクールなの?」
「……なに、突然…てかなんで…そんなこと知ってるの?」


湊から返ってきた言葉の最後で確信した。


"知ってるの?" という疑問符で返ってきたってことは私以外の女性の前では "クール" というのは "事実" ってことになるよね。


「…香奈が偶然、街中で湊と彼女が一緒にいる姿を見たらしいの。それで湊がどんな感じだったか聞いたら… "クールな感じだった" って言ってたから。」
「…それいつの話?」
「2年前の9月頃だって言ってたよ。」
「……あ〜〜〜あれ見られてたんだ。香奈さんに。」



やっぱり、否定しないってことは…

本当なんだよね。


だけど、その私の疑問もその後の湊の言葉に寄って確信に変わった。



「……確かに俺、美和ちゃん以外の女にはクールかも。」
「なんで?」
「…特に心許せる相手でもないから…かな。」



湊のそんな言葉はまさに香奈の言っていた言葉と全く一緒だった。


「…じゃあ、湊が心を許してる女の子って…?」
「美和ちゃんだよ。」



私の言葉になんの迷いもなく湊から返ってきたのは私の名前だった。



「え?私?」



湊が "私に心を許してる" なんて何故だか信じられなくて…。

思わずそう聞き返していた。



「そうだよ。俺が心を許してるのは美和ちゃんだけだよ。」
「なんで?」
「なんでって……。言ったでしょ。俺、美和ちゃんしか頼れる人いないって!」
「…じゃあ私の前では "素" の湊なの?」
「当たり前でしょ。美和ちゃんとは20年近く一緒にいるんだよ。そんなに長く幼馴染みで…なんで猫かぶる必要があるんだよ。」
「そ、それもそっか。」
「うん。でも、なんでそんなこと聞くの?」
「気になったから。」
「気になったって…なんで?」



改めてそう問い質されてしまうとなんだか少し答えづらかった。


だけど、湊が私の前では "素" なんだってことが何故だか嬉しかった。





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