ありのままの君を愛してる (5/9)






*****


──時刻は午後22時半。

アパートの最寄り駅に着き、改札を抜けるとすぐに男女の話し声が聞こえてきた。

しかもそれはなんだか言い合いをしているような感じにも聞こえた。


"痴話喧嘩なら他所でやってくれ。" と内心思いながら男女の横を通りすぎようとして気付いた。


男性のほうは私がよく知る人物だったのだ。

寧ろ声で気付かなかった自分が信じられない。



「……湊?」



よく知る人物だと確信してから思わず立ち止まってそう声をかけると、男性のほうが驚愕きょうがくしながら私の方に振り返った。

振り返った男性はやっぱり私のよく知る人物に間違いなかった。


「…美和ちゃん。」


湊が私の名を呼ぶと女の子の方もいつの間にか、私の方を見据みすえていた。



「こんなところで、なにしてるの?」
「いや、俺は帰りたいんだけど…。コイツが離してくれなくて…。」


湊はそう言いながら女の子の手を振り払うもすぐにまた女の子は湊の手を掴んでいた。



「…ふーん。その子誰?」
「あなたこそ、誰ですか?」


湊に "誰か" を聞いたはずなのに…。

答えたのは湊ではなく…何故か女の子の方だった。




「私は湊の──。」
「俺の大切な人だよ。」
「「え?」」


私が "幼馴染み" と言おうとした言葉が突然、湊に遮られて…湊から発せられた言葉に私も驚愕きょうがくして頓狂とんきょうな声が女の子の声と重なってしまった。


「そういうことだから…俺のことは諦めてくれ。」
「やだ!湊君が好きなの!」
「だから "好き" って言われても困るんだって。」
「私、諦めないもん!ずっと…。」
「待ってても俺は君の気持ちには答えれないから。」
「そんなのわからないじゃん!」
「いや、わかるよ。俺自身のことだし。」
「やだ!絶対諦めない!」



また湊と女の子の言い合いが始まってしまった。

──というか言い合いというよりは女の子のほうが一方的な気もする。





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