同居人は甘えた幼馴染 (3/10)
「……やっぱり美和ちゃんには
暫しの間を開けて湊はそう言葉にすると深く
「…家出、してきた。」
「…は?」
湊から発せられた "本当の理由" の言葉に理解できなくて私は思わず
「……揉めた。親父と。」
「なんで?」
またもや発せられた湊の言葉に私は疑問の言葉しか出てこない。
「就職のことで…色々言われて…。」
「……は?それだけで?家出してきたの?」
「…うん。」
湊からの言葉に私はもう呆れしか芽生えてこなかった。
──湊の実家はそんなにお金持ちというわけではないのだけれど、父親はIT企業に務めているからか普通よりは少し頭の堅い人間ではある。
(だからといって就職で揉めて家出って…。
子供のすることじゃないの!!)
口には出していないけれど、思わず心の中でそう叫んでしまった。
「……で、私にどうしろと?」
「美和ちゃん、暫く泊まらせて!」
「…は?」
「ねえ、お願い!美和ちゃん!」
「嫌よ絶対!」
湊のお願いには賛同できず、拒否を決めこむも湊は瞳を潤ますように私にお願いしてくる。
昔から湊にはこんな風に甘えられてきた。
それが嫌ではなかったから昔は甘えられても拒否なんてしたことはなかった。
だけど、今回ばかりはそうもいかない。
「俺、美和ちゃんしか頼る人いないのに…。」
「…大学の友達のところ行けばいいでしょ。」
「友達は……彼女と同棲中の奴と実家暮らしの奴だから行けないんだよ。」
「…じゃあ、あんたも彼女のところ行けば?」
湊だってもう子供じゃないんだから彼女の1人や2人いるだろうと思い、発した一言だった。
「いないよ。彼女なんて!…そもそも彼女いたら美和ちゃんのところに来ないし。」
「…あっそ。」
「だから、美和ちゃんお願い!暫く俺を美和ちゃんのところに置いてください!」
私が冷たく返事をしたのには気にも止めず、湊にはまたそうお願いされてしまった。
しかも頭まで下げてきたから思わず周囲を確認してしまったけれど、案の定…人はおらず私は安堵した。
そして、頭まで下げてお願いされてしまったら
断わっている自分が冷酷な人間みたいな気になってしまった。
「……あ〜〜もうわかったから頭上げて!」
「え?じゃあ美和ちゃん!?」
「……とりあえずよ。もう今晩は遅いし泊まらせてあげる。後のことはこれから考えるから。」
「やったーー!!美和ちゃんありがとうー!!」
湊はそう歓喜の声を上げながら再度私に抱きついてきた。
「ちょっと!イチイチ抱きつかないでよ!」
「え〜〜?!美和ちゃんのケチ!!」
「いいから来なさい!」
「は〜い!!」
私は湊を連れてロビーに入りロビーのすぐ側にある画面で門扉を解錠してから自分が借りている部屋までを湊と共にエレベーターで上がった。
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