同居人は甘えた幼馴染 (8/10)






*****

「……その子ならあの時に断った。」
「は?なんで?」
「なんでって……」


友人に "断った" ことを告げると何故か吃驚 びっくりされてしまった。


(別に俺が誰の "告白" を断わろうと関係ないだろ。)

心の中ではそんな悪態を吐いてすぐに友人1人が思い出したように言葉を紡いだ。


「……そういえば、湊ってさ、2年になってから誰の "告白" にもOKしなくなったよな。」
「…あ〜〜〜言われてみれば!」


彼女持ちの友人がそう言葉にするともう1人の友人も思い出したようにそれに納得した。


「…なんで?」


だけど、再び "なんで?" という疑問の言葉に俺は怪訝けげんな表情をしながら少しの間を開けて言葉を放った。


「……言わなきゃダメ?」


俺のそんな言葉にはあまり深い意味はないし別に隠しているわけでもないけれど、かといってあんまり話したいことでもない。


「あんだけ来るもの拒まずだったのに…それがパッタリとなくなったから何故なのか知りたい!」
「俺もめちゃ知りたい!」
「………」


2人のキラキラしたような表情が目に入って少し苛立ちを覚えた。


確かにあの時は "来るもの拒まず" だったかもしれない。

美和ちゃんへの想いを断ち切ろうとヤケになっていたから付き合えるなら誰でもよかった。

でも、それは本当に虚しいだけなんだって気付いてしまったから。


「……昔から好きな人がいる。」
「「は?」」


俺は観念したように小声で理由を告げると2人からはまたしても二度目の頓狂とんきょうな声が返ってきた。


「…え、好きな人いたの?お前。」
「しかも、昔から?なに?どういうこと?」


2人からは疑問の言葉しか返ってこなくて正直面倒だと思ったけれど、今まで何も話さずにいた俺が悪いのだから仕方ないのかもしれない。

だから俺はまた観念して美和ちゃんのことを名前を伏せて話すことにした。


「…俺が1年の時に誰かと付き合っていたのは……その好きな人への想いを断ち切ろうと思ってたから。…でも、無駄だった。…自分が思っていた以上に "あの人" が好きなんだって気付かされただけだった。」
「……だからやめたの?」
「うん、そう。」
「昔から……っていうのは?」
「幼馴染みだから。」
「幼馴染みか。なるほど。」


初めて話した俺の恋愛話だったけれど、やっぱりそれは話した後で何だか恥ずかしくなってしまった。

まあこの2人は俺が唯一信頼している友人だから別にいいんだけどね。


「湊にも好きな人いたんだな。」
「……いちゃ わりぃの?」
「そんなこと言ってねぇよ。…ただ、安心しただけ。」
「安心?」
「確かに俺も安心した!女なら誰でもいいのかと思ってたし。」
「俺も俺も。」
「……あっそ。」


2人が心配してくれていたのは嬉しいけれど、なんだか複雑な気分だった。


「……あ、ねぇ。どっちか夕飯に付き合ってくんない?」


俺は思い出したように2人にそう告げると。


「それは構わねぇけど、アテがある人はいいのか?」
「うん、どうせ仕事だろうから大丈夫!夕飯食べてからのほうが都合良いし。」
「あ、もしかして…"アテ" ってさっき言ってた好きな幼馴染み?年上の人なんだ?」


俺の "家出" の "アテ" が美和ちゃんのことを話してしまった後だったからか友人の1人が明らかに
妖笑ようしょうを含んだ表情に変わって "しまった" と思った。

名前は出していないものの美和ちゃんのことを話してしまったことに今更ながらに後悔してしまった。


「……うん、まあ……」
「まじかよ!いいな〜〜好きな人が年上の女性とか!羨ましい!」


俺が肯定の言葉を紡ぐと何故か今度は羨望されて俺はもう呆れるしかなかった。

ちなみに羨望してきた友人は彼女なし。

夕飯を付き合ってくれるのも彼女なしの友人になるだろう。



「俺は夕飯パス。彼女とデートだから。」
「お前……くっそ!彼女も好きな人もいないのも俺だけかよ!くっそーくっそー!」


そう大袈裟に悔しがる友人に苦笑いしかできなかった。


「じゃあ夕飯食べに俺とデートな!」


俺は妖笑ようしょうを浮かべながら
友人に揶揄やゆの言葉を放つと──。

「男同士で夕飯って…デートじゃねぇだろ!」


割と真剣に突っ込まれてしまった。





───そんな友人達との会話が盛り上がる中でHR開始予鈴が鳴り、本日の大学生活が始まった。





[ 8 / 27 ]

*prev | Next#

☆ページ移動☆


[index]


.