No.1な彼

「…麻弥は?」
「へっ?」

啓人(ひろと)は一通り自分のことを話してくれた後、唐突に私に問い質(ただ)してきて私はまた頓狂(とんきょう)な声を出してしまった。

「家出の理由だよ。」
「…あ、えっと…私も実はお父さんと喧嘩しちゃって…。」
「…へぇ。麻弥も親父さんと喧嘩なのか。理由はどうであれ俺らって似た者同士なんだな。」
「そ、そうだね。」

啓人(ひろと)の "似た者同士" って言葉に何だか無性に嬉しくなってしまった。
私は啓人(ひろと)とこうして話ができて啓人(ひろと)のことをいっぱい知れて…啓人(ひろと)のことが気になって仕方なくなっていた。

「…あ!やべっ!もうこんな時間かよ!」

啓人(ひろと)は自分の右手首にある腕時計を見てそう呟いた。

「今何時?」
「もうすぐ18時。麻弥、家まで送るよ。俺、車で来てるんだ。」
「うん。」

私がそう返事をすると啓人(ひろと)は立ち上がって歩き出して―私も慌ててその後について行った。

「俺が払うから麻弥は先に出て待ってろよ。」
「え?いいの?」

啓人(ひろと)の "払う" という言葉に私は驚愕(きょうがく)して思わず聞き返してしまった。

「俺が誘ったんだし麻弥は出さなくていいよ。」
「うん、ありがとう。」

何故だかそう言われてしまうと逆らえなくて私は素直に頷いてしまった。

――どうやら私は啓人(ひろと)の優しさには弱いみたいだ。


[ 24 / 68 ]
*ページ移動*

★Index★