
No.1な彼
「…麻弥は?」
「へっ?」
啓人は一通り自分のことを話してくれた後、唐突に私に問い質してきて私はまた頓狂な声を出してしまった。
「家出の理由だよ。」
「…あ、えっと…私も実はお父さんと喧嘩しちゃって…。」
「…へぇ。麻弥も親父さんと喧嘩なのか。理由はどうであれ俺らって似た者同士なんだな。」
「そ、そうだね。」
啓人の "似た者同士" って言葉に何だか無性に嬉しくなってしまった。
私は啓人とこうして話ができて啓人のことをいっぱい知れて…啓人のことが気になって仕方なくなっていた。
「…あ!やべっ!もうこんな時間かよ!」
啓人は自分の右手首にある腕時計を見てそう呟いた。
「今何時?」
「もうすぐ18時。麻弥、家まで送るよ。俺、車で来てるんだ。」
「うん。」
私がそう返事をすると啓人は立ち上がって歩き出して―私も慌ててその後について行った。
「俺が払うから麻弥は先に出て待ってろよ。」
「え?いいの?」
啓人の "払う" という言葉に私は驚愕して思わず聞き返してしまった。
「俺が誘ったんだし麻弥は出さなくていいよ。」
「うん、ありがとう。」
何故だかそう言われてしまうと逆らえなくて私は素直に頷いてしまった。
――どうやら私は啓人の優しさには弱いみたいだ。
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