秘めた想い

―――本当は最初から気付いていた。
麻弥が名前を名乗ったあの時から―。

"七瀬ななせ" なんて苗字は珍しい分類に入る。
だから、なんとなく気付いていた。
麻弥が "七瀬財閥ななせざいばつ" のお嬢様だってことに。

"七瀬財閥" は大企業で有名な会社の一つだ。

それに麻弥にはまだ話していないけれど、俺の父親も大手建設会社の社長だったりする。
俺は父親に反発して家を出た身だからもう勘当かんどうされたも同然で―関係ないけれど、本来なら俺は跡継ぎだった。
だけど、俺は父親の求める大学に進学したものの大学二年を迎えたと同時に中退してしまったんだ。

大学を中退した理由は…他にやりたいことを見つけたから―である。

もちろんこれもまだ麻弥にも家族にも打ち明けていないことなんだけど。


――そんな自分と麻弥はなんだか似ているような気がしたから最初は一目惚れだったけれど、今は麻弥が父親に反発している気持ちがわかるから――。

もしかしたら麻弥のことが出会った頃よりは好きになっているのかもしれない。
でも、今はまだ麻弥には俺の気持ちを伝えるつもりはない。
それと俺の実家のことと俺が今ホストをしている理由も――。


[ 51 / 68 ]
*ページ移動*

★Index★