記憶と約束

「……お前、本当に麻弥のこと何もわかってねぇんだな。」
「…どういう意味ですか?あなたには…わかるんですか?」
「……わかるよ。俺もそうだったから。」
「え?」
「…麻弥は気付いてないけど、俺の父親も "社長" なんだよ。…まあ俺はもう父親とは縁切ったも同然だけどな。」
「…え?」


男性の言葉の意味が理解できなかった。


「…俺の名前、高梨 啓人たかなし ひろとなんだけど…」
「…??」
「…あれ?知らねぇ?…高梨たかなし建設って…。」
「…は?…高梨たかなし、建設?…って…あの高梨たかなし建設…ですか?」
「なんだよー。知ってるじゃん。そう、あの高梨たかなし建設だよ。」
「え、えええぇぇええ?!」


衝撃的な事実にいつになく僕は大声で叫んでしまった。

"高梨たかなし建設" といえば、七瀬財閥と匹敵ひってきするくらいには有名な大企業だから――。


「おー良い反応をありがとう!」
「…あなたが…あの高梨たかなし建設の御曹司、なんですか?」
「その言い方はやめてくれる?俺、もう後継ぎじゃねぇの。」
「え?でも…。高梨たかなし建設って…。」
「言っただろ。俺はもう父親とは縁切ってるって…。高梨たかなし建設の後継ぎは俺じゃなくて弟が継ぐことにもなってるんだ。」
「…じゃあなんで僕に話したんですか?」
「…俺も同じだったから。…"重荷" だったんだ。…"御曹司" って言われるのが…。だからわかるんだよ。麻弥の気持ち。」
「……。」


高梨たかなしさんのそんな言葉にどう答えたらいいのかわからなかった。
僕は一度も "佐倉グループの御曹司" と周囲に言われても "重荷" なんて思ったことも感じたこともなかったから――。


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