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可愛い嫁




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──それは、同期の吉野 英司よしの えいじと社内食堂で昼食をとっている時だった。

英司の話に適当に相槌を打ちながら定食を食べていたその数分後──。

突然、スーツのポケットに入れていたスマホが振動した。

俺は箸を置き、ポケットからスマホを取り出して画面を見る。

そんな俺の様子に気付いた英司も話を中断させて──。

「…電話?誰から?」


画面を凝視ぎょうしをしている俺にそう不思議そうに問い質してくる。


「……母親。」


画面に表示されている着信通知の名前は…。

俺の母親からだった。


滅多なことがない限り母親から電話が掛かってくることはないし寧ろ突然掛かってくる母親からの電話はロクな内容じゃない。



「…出ねぇの?」


なかなか電話に出ない俺に英司がそう聞くも俺はそれには答えず通話ボタンを押して電話に出た。


“…あー!出たー!よかったー!“


通話ボタンを押して耳にスマホを押し当てた瞬間に母親からの明るい声が聞こえてきて俺は思わず眉間に皺を寄せてしまった。


「…なんだよ。」


そう素っ気なく返事をすると、母親からはまた明るい声が聞こえてきた。


“爽!次の休みはいつなの?“
「…は?」

母親からの言葉の意味が理解できなかった。


次の休みがいつかなんてどういう意味だろう。


まあ最近、仕事が忙しくて実家には帰れてなかったけど。



“だから、次の休みがいつかって聞いてるの。“
「…なんでそんなこと聞くんだよ」
“いいから教えなさい!“


母親からそんな命令口調が聞こえて俺は呆れるしかなかった。


「…今週の土曜日。」


少しの間を開けて俺はそう答えた。

まあ基本的には土日祝日が休みなんだけど、たまに休日出勤しなくちゃいけない日があってそのときは大抵仕事が立て込んでいる時だ。


“そう。じゃあ今週の土曜帰ってきなさい“
「は?」


母親からの "帰って来い。" という言葉にまたまた理解できなかった。



“土曜日帰って来るのよ?!“
「なんでだよ。」
“話があるの。“
「話?だったら今話せよ」
“駄目よ!土曜に話すわ。だから土曜に絶対帰ってくるのよー!じゃあねー!“


そんな言葉と共に母親は一方的に電話を切ってしまった。

俺は意味がわからないままスマホを再度ポケットに閉まった。



「…母親、なんだって?」


今まで俺の電話を無言で見ていた英司がそう問い質してきた。


「休み聞かれたから今週の土曜日休みって言ったら話があるから帰って来いってさ。」
「話?なにそれ」
「知らねぇよ」


俺がそう答えると英司もそれ以上は追及してこなかった。


母親の "話がある" には全く予想がつかない。

だけど、なにかとんでもない内容であることは予感していた。






そして、その予感は土曜日…。
見事に的中することになるのだった──。


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