心配事【廉視点】




「…あ、でも…体のことがなくても彼氏いるなら食事は無理だよな。ごめん。」
「そうだよ。男と食事になんて冗談じゃねぇ。」


男の言葉に俺は歯向かうようにそう言い放った。



陽菜の身体のことがなくても俺以外の男と食事なんて冗談じゃない。

それが現実になったら俺はきっと、いや、絶対に気が気でいられなくなると思う。

そんなことを考えていると男が再度口を開いた。


「…廉君、だっけ?」
「なんだよ。」
「…神楽かぐらとはいつから付き合ってるの?」
「まだ陽菜が大学通ってた時からだけど。」
「じゃあ君は年下?」
「だったらなんだよ。」
「いや、別に。…そうか。彼氏いてその彼氏にしか触れられないなんて…なんか悔しいなって思ってね。」


男はそう言うと陽菜と俺の横を横切り、 "じゃあな、神楽かぐら。" と呟いて帰って行った。

そんな男の姿に訳がわからなくて男の後ろ姿を眺めながら。


「…なんだよ。アイツ…。」


俺は思わずそう呟いてしまった。

だけど、陽菜は俺の言葉とは裏腹に─。


「池上さんに悪いことしちゃったな。」


なんて言うもんだから俺はその言葉の意味が理解できなくて陽菜に聞き返した。


「は?なんで?」
「だって…私が廉にしか触れない体だから。」
「別にいいじゃん。俺は逆にそれが嬉しいけど。」
「え?どうして?」
「どうしてって…陽菜が仕事中に男に触られることもないだろ。…仮に触られたとしても俺は大学あるから陽菜を助けにこれねぇし。」
「あ、そうか!」



陽菜が男性アレルギーなのは嬉しいけれど、男は女の何倍も力があるから "男性アレルギー" でも力でねじ伏せられたら…陽菜がかなうはずもない。

だから、俺は早くいつでも陽菜を守れるようにこの職場にきたいと思っているんだ。


「おう!つかそんな事より、早く帰ろうぜ!」
「あ、う、うん!」


陽菜は俺のそんな気持ちには気付いてないのか─俺の "帰ろう。" という言葉に慌てたように返事をしていつものように俺の腕にしがみついてきた。


そんな陽菜を "可愛いなぁ。" なんて思いながら横に並んで帰り道を歩いた。


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