幸せの先と未来
「…す、好きです!藤堂先輩のことが好きなんです!お、お付き合いしてくれませんか?」
俺の予想は的中した。
大学内では俺に彼女がいることは有名なはずなんだけど、それでもこうやって告白してくるんだから女ってよくわからない。
「…悪いけど、君とは付き合えない。」
「…え、あ、じゃあ、彼女いるって…噂、本当…なんですか?」
女の子の言葉に理解できなかった。
――"噂" ってなんだよ。
陽菜とのことが "噂" になっていることに思わず心の中で呟いてから口にも出した。
「……噂じゃねぇよ。彼女いるのは本当だし。今は社会人だけど、ここの卒業生だから。」
今まであまり詳しくは聞かれたことがなかったから "卒業生" とまで言葉にしたのは初めてかもしれない。
「…え?卒業生?だ、誰ですか?」
女の子のそんな言葉に絶句してしまった。
"誰" か―なんて名前を出したところでわかるはずもないのに答える必要あるのか――。
「…誰かなんて聞いたって知らねぇだろ。卒業してから一回も大学に来たことねぇ人だし。」
そう、陽菜は卒業してから一度も大学には来ていない。
それに陽菜は俺よりも二つ年上で目の前にいる女の子は恐らく一年か二年で陽菜とは五つほど歳も離れているはず。
そんな後輩である女の子が陽菜のことを知っているわけがない。
「…あ、そうですよね…。すみません。彼女がいるってただの噂だと思ってたんで…。」
俺は今まで告白された女の子全員に "彼女がいる。" と伝えていたはず――。
確かに誰も会ったことない人だから仕方ないのかもしれないけれど、"ただの噂" にされているのは理解できない。
「…別にどうでもいいけど、彼女いるのは事実だから…ごめん。」
「……藤堂先輩が卒業されてもやっぱり…。」
女の子のそんな言葉を聞いて何が言いたいのか瞬時に理解してしまった。
俺が卒業しても "別れるつもりはないのか?" と、いったところだろう。
"やっぱり" ではなく―俺はもう陽菜以外の女と付き合う気はない。
「…俺が卒業しても彼女と別れるつもりなんてねぇよ。彼女以外と付き合う気もねぇし。」
自分でも何故こんなにも陽菜だけに夢中なのかわからない。
それに将来がどうとかはまだわからないけれど、俺にはもう陽菜以外の女なんて考えられなかった。
「……そうですよね……。すみません、でしゃばったことを聞いてしまって……。先輩、彼女とお幸せに!」
そう言って女の子は校門のほうへと走り去って行った。
結局、何が言いたかったのか。
まあ本当に陽菜と別れるなんて考えたこともなかったからあの女の子に言ったことは嘘じゃないし今更どうでもいいけど。
女の子の背中を見送りながらそう考えてからふと今何時だろうと思い腕時計を確認すると、女の子に呼び出されて思っていたより時間は過ぎていたことに気付き俺は慌てて校門へと向かった。
――これから就職活動の準備とか色々やらなきゃいけないことがあるんだから。