苦手なもの




私は "困ります" って何度も伝えるけれど、池上さんは一歩も引く気はない様子でしつこく誘って来た。


そして、出入口で退勤をして会社を出て廉に電話をしようとスマホを取り出そうとしたところでふいに池上さんから腕を掴まれてしまった。


その瞬間─私の体中から蕁麻疹じんましんが一気に湧き出てきた。


だけど、今、季節は冬で長袖を着ているため…私の体の異変は池上さんには見えなかった。


だから池上さんには今私の身体がどうなっているのかわからない状況で私は池上さんに触られたことで一気に嫌悪感と恐怖に陥っていった。



「い、いやっ!」
「神楽!マジで食事行こうよ!なあ?」
「いや!離して下さい!」
「食事に来てくれるなら離すから!」



池上さんはそう言ってなかなか離してくれそうになかった。


私はそんなことより今すぐにでも離してほしいのに。

本当に本当に男の人に触れるのが無理なんだ。


廉以外の人に触れられるのは──。



「陽菜!」


必死で拒絶の言葉を訴えていると聞き慣れた声に呼ばれてそちらに目を向ける。


すると、そこには不機嫌な表情で歩み寄ってくる廉がいた。



「おい、陽菜から離れろ!」


廉はそう言うと私を引き寄せて池上さんから離してくれた。


その瞬間、一気に私の身体の蕁麻疹じんましんも嫌悪感も恐怖感もなくなってしまった。



「え、"陽菜"って…彼氏?」
「あぁ。陽菜の彼氏だよ。だから俺の許可なく陽菜に触ってんじゃねぇよ。」
「神楽、彼氏いたんだ…。」



池上さんはそう呟くと、ガックリと肩を落とした。

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