味方は元恋敵 [4/6]



私はそこに立っていた人物に驚きを隠せなかった。



「あんたらその子をどこに連れて行く気だよ。」



そう、その人物は……

美都みさとさんだったのだ。



あの事件以来、美都みさとさんとは会話をすることもましてや響ちゃんのことで絡まれることもなかった。





――なのに、どうして?





「あ?お前には関係ねぇだろ。」
「関係なくねぇよ。あたしはその子のクラスメートだからな。それに…」
「あ?」
「頼まれてんだよな。響に。」
「あ?響って、桐谷きりやのことか?」


美都みさとさんの言葉の意味が理解できなかった。



"響に頼まれている。" というのはどういうことなのだろうか。


「そう、桐谷 響きりや きょう。"もし俺の彼女に何かあったときは助けてやってくれ" ってね。だから、あたしには関係あるんだよ。」
「…チッ。…行くぞ、お前ら。」


先輩達は美都みさとさんの言葉に舌打ちをすると少しの間を空けてからそう言い放ち、校舎の方へと去って行った。



そんな先輩達がいなくなってすぐ恐怖から解放された私は腰が抜けてその場にしゃがみ込んでしまった。

「…なにしてんだよ、あんた。」


突然しゃがみ込んでしまった私に不思議そうな表情で美都みさとさんは見下げてきた。


「あ、怖かったから、安心したら…腰が抜けてしまって…」
「ふーん。まああんたが無事でよかったよ。」
「あ、あの、美都みさとさん。助けてくれてありがとうございます!」


未だに立てないまま私はしゃがみこみながら美都みさとさんにお礼を述べると。


「別に。響に頼まれたからそれを実行しただけだよ。それよりも響は一緒じゃねぇのかよ。」
「あ…今朝、響ちゃんから遅刻するって…連絡ありました…」
「はあ?!なら、祐也か玲美れみと一緒に登校しないといけないんじゃねぇのかよ。なんで一人で来てんだよ。」


美都みさとさんのそんな言葉になにも返す言葉がなかった。


なぜなら響ちゃんにも散々言われていた言葉だから。



"俺が一緒に行けねぇ時は絶対に祐也か玲美れみに連絡するんだぞ。絶対に一人で登校すんなよ。"


そう言われていたのに私は二人に連絡しなかった。


理由はやっぱり私が深く考えていなかっただけで響ちゃんの言葉を信じていないわけではない。



「…二人には迷惑かけたくないんです。」
「…は?」



"二人には迷惑かけたくない。"


それが……私が二人に連絡しなかった理由である。



「…あんたバカじゃねぇの。」



暫く沈黙が続いた後美都みさとさんから突如発せられた言葉はそんな一言だった。



「…あの二人は響に頼まれただけじゃなくちゃんとあんたのことを本気で心配してると思う。少なくともあたしなんかよりは…な。」



美都みさとさんの言葉は少し荒っぽいけれど、今の私には妙に心に染み渡った。


「…美都みさとさん…ありがとうございます。」
「…別にお礼なんていらねぇよ。それより、まだ立てねぇのか?」
「え?」


美都みさとさんにそう言われて私はまだしゃがみ込んだままだったと今更ながらに気付いて慌てて立ち上がった。



「…立てたならそろそろ教室行くぞ。」


美都みさとさんはそう言ってきびすを返して歩き始めてしまったから私も慌てて美都みさとさんの後を追いかけた。


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