──だけど、彼はユウの適当な返事を気に止めていないのか再び口を開いた。
「僕、先輩に会いたかったんです!」
「そう……。ごめん、遅刻するから。」
彼の "会いたかった。" なんて言葉にも曖昧に答えてからそう言い残して小走りで階段を上ろうとするところで人とぶつかり相手の顔も見ずに謝罪の言葉を述べた。
「あ、ごめんなさい。急いでて…。」
そのまま階段を掛け上がり、急ぎ足で教室の少し前まで来ると同時に上野真澄先生も廊下を走りながら声をかけてきた。
「北野さん、早く教室に入って!」
「はい」
そう上野先生に返事をしてすぐ佐倉とすれ違いユウの姿を見た佐倉に不思議そうな声音で尋ねられた。
「あれ、アンタ…俺と別れてからここまでに時間が長かったんじゃないの?」
「悪かったな。知らない一年の男子に呼び止められたんだよ。」
「…なるほどね。まあそうだな…。だって、アンタ…喋らなきゃ可愛いもん!」
佐倉はそう言ってユウをじっと見据えながら言葉を紡いだ。
「…お世辞でもありがと、佐倉。」
「俺は真面目に言ってるんだけど…」
「北野さん、佐倉君、喋ってないで座りましょう!」
「は〜い。」
佐倉と会話をしていると、上野先生に着席するように促されてそれぞれ自分の席に座ってすぐにHRが始まり……。
一時間目の英語が始まり……。
いつものように時間が過ぎていく。
***
一時間目の英語の授業も終わり、次の数学の教科書を鞄から出している時だった。
「あれ、カイチョーだ!どうしたの?」
「あぁ、佐倉か。お前、ここのクラスだったんだな。…今朝、女子生徒とぶつかって探しているんだ。その子が生徒手帳を落としたから届けに来たんだよ。」
佐倉のいる方向からそんな会話が聞こえ、そちらを見据えると佐倉の隣にはメガネをかけた真面目そうな男子生徒が立っていた。
そして、再度佐倉と男子生徒の会話が聞こえてきた。
「え、誰なの?」
「北野ユウ。」
佐倉から "カイチョー" と呼ばれていたその男子生徒から発せられた名前にユウは少しドキリとした。
「ああ、今連れて来ますよ。」
そんなユウとは裏腹に佐倉は男子生徒にそう返事をすると、
「アンタ、意外にドジ?」
「ドジじゃない!」
「……うん、やっぱり喋らなきゃオーケーだわ!」
「あのなぁ。」
佐倉とそんな会話をしてすぐにユウは
「ありがとうございます。生徒会長の
そうお礼を述べてから確認のために目の前にいる彼に名前をニッコリと微笑みながら尋ねた。
「ああ…。怪我とかしてない?」
「はい、大丈夫です。もうそろそろ教室に戻った方がいいですよ。もうすぐチャイムが鳴りますから。」
ユウが言葉を最後まで言い終わる前にチャイムが鳴ってしまった。
「じゃあ、また。」
「はい。」
「アンタ、今何も感じなかった?」
「別に。」
ユウは佐倉のそんな言葉に迷いもなくそう返事をする。
「アンタ、結構鈍いね!」
「佐倉〜、早く座れ!お前だけだぞ、立ってるのはっ!」
ユウに告げたはずの言葉はユウには届かず、代わりに聞こえてきた先生の言葉に
「は〜い。」
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