嵐の予感と想い ( 3/ 19 )


「律先輩、片付けは私がやりますよ。」
「…佐々木の自主練終わるまで待つのか?」
「……。」


私は慌てて律先輩に反論するも続いて発せられた律先輩の言葉に何も言い返せなくなってしまった。

確かに佐々木君が何時まで自主練をするかなんて予想もつかないわけで…。


「…あ、あの…任せちゃっていいんですかね?」
「…いいんじゃねぇの。矢野もいるわけだし…。」
「…ん?呼んだ?」


突然、聞こえてきた声に驚いて私は律先輩の後方こうほう凝視ぎょうしすると、そこには居たのは…ドリンクボトルの入ったかごを抱えている麻子あさこ先輩だった。


「…矢野。」
「何よ。」
「…沙結さゆもういいか?」
「いいけど、ボール篭の片付け終わったの?」
「それが佐々木君がまだ練習するみたいで…。」
「え?佐々木?」


私がそう返答すると、麻子あさこ先輩は私の言葉を反芻はんすうして不思議そうにしながらも律先輩の横を通り過ぎ、上履きから館内用の運動靴に履き替えて体育館内に入って来た。


「…あ、本当に佐々木まだ居たんだ!…じゃあ沙結さゆは上がってもいいよ。」
「え?でも…。」
「後は私がやっておくよ。…桜木…秋斗あきとまだ部室にいるんでしょ?」
「…いると思うけど。」
「なら問題ない。だから沙結さゆ帰っていいよ。」
「あ、は、はい!わかりました!いつもいつもすいません!お先に失礼します!」

もう何度目なのかさだかではない─麻子あさこ先輩のご厚意に甘えて私は部室に向かってきびすを返したのだった。


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