嵐の予感と想い ( 5/ 19 )


「…あ、いや、別に、"不都合" とか…そういうわけでは…ないんですけど…。」


佐々木はそこまで口にすると、何故かその後の言葉を詰まらせてしまった。


そして、俺は佐々木の "けど…。" の続きが妙に気になってしまう。


(まさか、コイツ…?!)


そう思考してすぐに…佐々木の妙な様子が気になってしまい、思わず尋ねてしまっていた。


「…お前…。まさか沙結さゆのこと好きなのか?」
「…え?」


俺の言葉に驚いたような声を出したのは…何故か矢野だった。


逆に佐々木は沈黙のまま顔をうつむかせていた。


否定しない──ということはつまりは図星というわけか…。


「…沙結さゆは俺のだから。誰にも渡さねぇよ。」


俺がそう宣言すると、佐々木は唐突に顔を上げて口を開いた。


「わかってます!…だけど、俺も立川たちかわが好きで仕方ないんです。…だから今はまだ諦めるつもりはありませんから!」


佐々木はそう言葉にしてから矢野のすぐ側にあるボール籠を持って体育倉庫へと向かってきびすを返して行った。


「…宣戦布告か…。上等じゃん!」
「…桜木…。あの佐々木って子…。意外と手強てごわいかもしれないよ。」
「…みたいだな。」
「"みたいだな" って…。呑気ねぇ。」
「そんなんじゃねぇよ。あいつが何を仕掛けて来ようが…沙結さゆは俺の女だから誰にも渡ねぇよ。」
「…あらそう…。」


普段は無口と言われている俺だけど、何故だか─秋斗や矢野にはつねより何倍かの言葉が出てくるから不思議だ。

まあそれくらい秋斗と矢野には俺が唯一心を開いているといっても過言ではない友人だからなのかもしれないけれど──。



































──沙結さゆは俺のだ。

沙結さゆに告白されて…。

"何があっても必ず守ってやる。"
…そう決めたんだ。

…だから絶対誰にも渡さない──。




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