嵐の予感と想い ( 9/ 19 )


「…可愛いってなんだよ。」
「あ、ごめんなさい。でも律先輩があんなに必死になって喋ってるのを初めて見たんで…。」
「…秋斗は俺を揶揄からかうのが楽しいだけだよ。」


そう言葉にしながら律先輩も何だか楽しそうだった。

本当に畑山はたやま先輩とは "何でも言い合える仲なんだろうなぁ。" と改めて思ったのだった。


「…沙結さゆ、敬語なしでいい。」
「へっ?」


律先輩の唐突な言葉に私は理解できなくて頓狂とんきょうな声を出してしまった。


「だから敬語なしでいい。」
「え?いや、あの…。律先輩は年上ですし…。」
「…年上とか関係ない。沙結さゆは俺の彼女なんだから。」
「そ、それはそうですけど…。」


確かに私と律先輩は恋人同士だけど、やっぱり年上の人にタメ口で話すなんてできるわけがない。

そう思っているのに──。
律先輩にはそれが気に入らないみたいだった。


「…なら敬語なし。それと "先輩" もいらねぇ。"律" だけでいい。」
「え?そ、そんな〜〜…!!」


敬語だけじゃなく呼び方まで追加されてしまって私は躊躇ちゅうちょした。



──今までがずっとそうだったから急に…。

"敬語なし"

"先輩なし"

──なんて私には難題すぎる課題だった。



[ 18 / 60 ]

*Index*